■壁と卵、あるいは批判する勇気
イスラエル最高の文学賞、エルサレム賞を受賞した村上春樹さんが授賞式の記念講演でガザ攻撃を批判したことが話題になっています。
私もテレビでちょっとだけ見ました。
村上さんはイスラエルによるガザ攻撃に触れ、体制を壁に、個人を卵に例えて、「高い壁に挟まれ、壁にぶつかって壊れる卵」を思い浮かべた時、「どんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、私は卵の側に立つ」と強調し、軍事力に訴えるやり方を批判しました。
そのスピーチを見て、イスラエルで音楽賞を受賞したバレンボイムの受賞のスピーチの映像を思い出しました。
批判する勇気、信念を行動する勇気に感動しました。
拒否や無視からは何も始まりません。
チャンスは最大限に活かすべきですが、日本人はともするとゼロか100か、つまり受賞拒否か翼賛スピーチで対応しがちです。
村上春樹さんの作品は、評判が高いという、ただそれだけの理由で、私は1冊も読んでいませんが、読むことにしました。
村上春樹さんは、こうも述べています。
「壁は私たちを守ってくれると思われるが、私たちを殺し、また他人を冷淡に効率よく殺す理由にもなる。」イスラエルが建設しているパレスチナとの分離壁の建設を指しているのでしょうが、もっと多くの示唆を含んでいるように思います。
たとえば、私たちの周りにもたくさんの壁がありますが、それは私たちを守ってくれているわけではありません。
人を守るのは人でしかありません。壁では人は守れません。
村上さんは、全世界に発信されるというスピーチの場を最大限に活かしました。
ちょうど同じ日、テレビで世界中に話題を発信した人がいます。
中川財務大臣です。
テレビでの情報発信が、どれほど大きいものか。
中川さんの事件も、そのことを教えてくれています。
テレビに登場できる人には、たくさんの手段があることを示してくれています。
もっとその手段を効果的に活かしてほしいと思います。
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コメント
知性 品性 勇気を賞賛したいです
宮内
投稿: 宮内 俊郎 | 2009/02/17 11:03