■ジェシカ・リンチ、アラモ、小沢一郎
ジェシカ・リンチ上等兵。「米国史上もっとも有名な戦争捕虜」と言われるジェシカの名前は忘れていても、テレビで放映された彼女の救出映像はおそらく多くの人の頭に焼きつけられているでしょう。
ジェシカ・リンチは「2003年3月23日戦闘中に捕虜になり、4月2日に米軍特殊部隊による深夜の奇襲作戦で救出された」のですが、救出の模様は特殊部隊広報班の暗視カメラで撮影され、テレビで世界中に放送されました。
それは「創られた映像」だったことがすぐに露見しました。
しかし、それによってアメリカのイラク侵略行為の真実はぼやかされてしまう上では大きな効果を発揮しました。
まあ、イラク侵略そのものが、大量破壊兵器保持という、後に完全な事実無根とされた「でっちあげ」によって始められ、続けられていますし、その出発点の9.11事件も犯人が誰かなどはまだわかっていません。
ブッシュ側がやった犯罪だという見方さえあります。
「お上」がやった行為は、それが「自然法」に反しているとしても、「犯罪」にはならないのが国家制度ですが(戦争は負けない限り犯罪とはされません)、政府は嘘をつかないとか裁判官は正義だなどという幻想に惑わされてはいけません。
悪の根源は、すべてといっていいと思いますが、権力に起因しています。
一番疑うべきは、「正義の代理人」であることは、歴史が物語っています。
ジェシカの嘘(ちなみに本人は真実を話しています)にしろ、ブッシュの嘘にしろ、あるいは湾岸戦争の時に有名になった、原油まみれの海鳥の写真の嘘にしろ、大切なのはそれが事実かどうかではなく、その報道がもたらした世論への影響です。
一度、刷り込まれた映像は、それが嘘だとわかっても、消えることはありません。
映画「アラモ」に、ジョン・ウィン扮するデビー・クロケットが仲間のテネシー人たちにアラモに立てこもってメキシコ軍と戦おうと呼びかける場面があります。
クロケットは、敵のサンタアナ将軍の「手紙」をみんなの前で読み上げます。
その挑戦的な内容に、仲間は怒り出して、戦おうといいだします。
ところがみんなが盛り上った時に、クロケットは、この「手紙」は実は自分が書いたものだと白状します。
ところが盛り上がった仲間は、その手紙が真実ではないとしても、サンタアナは許せないとさらに盛り上がり、結局、戦いに参加するのです。
以前も書きましたが、この映画は「喧嘩の始め方」に関しても示唆に富んでいます。
話がまた拡散していますが、こんなことを書き出したのは、昨日の小沢民主党代表の記者会見を見たためです。
小沢さんの秘書の逮捕は、昨日も書きましたが、大きな政治が働いているはずです。
そして、まさに「アラモ」の物語が始まった気がします。
アラモの戦いはアメリカの敗北で、見事に喧嘩を始めたトラヴィス大佐もクロケット大佐も死んでしまいます。
しかし、アラモのおかげでテキサスはアメリカのものになります。
いうまでもなく、テキサスはブッシュの出身地です。
ジェシカを「戦場のヒロインに育て、イラクへの戦意を煽ったのはマスコミです。
嘘をついて利を得る陰謀家とそれに迎合して利を得るマスコミの協働作業です。
小沢事件がこれからどう展開していくかに関しては、マスコミの役割は大きいでしょう。
私見を書いておけば、小沢さんは素直な人なのだという気がしました。
どこが「剛腕」なのか理解できませんが、単に小賢しくないだけのような気もします。
こんな馬鹿な国民のことなどもう構っていられないと、投げ出すのではないかと懸念していましたが(一度それをやりましたし)、そうではなく私憤の闘いを始めてしまったような気がします。
しかし、立川ビラ配布事件を思い出せば、勝負は明白です。
誰でも有罪に出来るのが権力の本質です。
小沢さんが日本の政治の代表になることで損をする人にとっては、有罪にすることなど朝飯前のことでしょう。
ジェシカの物語も、そうでした。
一説では、彼女は自動車事故で負傷しただけとも言われています。
どんなことも針小棒大にできるのが、現代のマスコミの怖さです。
私たちはそうしたマスコミに操られている、主体性のない存在でしかありません。
小沢さんは敗北するでしょう。
私は、これまで小沢さんが好きになれませんでした。
戦争が出来る普通の国を目指すなどという考えの持ち主に、政治を預けたくありません。
しかし、昨日の会見を見て、小沢さんが少し好きになりました。
明らかな負け戦を仕掛ける人に悪人はいないからです。
アラモの映画を観て以来、それが私の人間観のひとつになりました。
そして私も「善人」になりたくて、負け戦好きになってしまったのです。
困ったものです。
今日は長くなってしまいました。
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