■「生きるための経済学」(ビオ経済学)
とても刺激的な本を読みました。
安冨歩さんの「生きるための経済学」(NHKブックス)です。
書き出しは、今の経済学は物理学の原理に反していると指摘します。
そしていろいろと刺激的な議論が展開され、要するに今の経済学は、人類のみならず、すべての生態系を破壊する「死の経済学」(ネクロフィリア・エコノミー:ネクロ経済学)だというのです。
マクロ経済学でもミクロ経済学でもない、ネクロ経済学です。
その経済学から抜け出て、生を目指す「生きるための経済学」(ビオフィリア・エコノミー:ビオ経済学)に取り組まなければいけないというのです。
そのためには、創発的コミュニケーションを通じて価値が生み出され、それが人々に分配されるようにしなければいけないという処方箋は、とても共感できます。
これだけでは内容がうまく伝わらないでしょうが、私にとっては実に納得できる本でした。
しかし、この著者は「常人」とは言いがたく、かなりダメッジを受けてきているようです。
どういうダメッジかについても、あっけらかんと語っています。
半分は共感できますが、半分は違和感がありますが。
自分のことだけではなく、その「怒り」がアダム・スミスにまで言及するのはいささか異論はありますが、実に素直に書いていますので嫌味はありません。
私と同じタイプかもしれないというのは僭越ですが、親しみを感じます。
でもまあ、あんまり友だちにはなりたいとは思いませんが。
私にとっては、しかし初めて理念のところで共感できる経済学の本でした。
いや、経済学の本とはいえませんね。
家族論、人生論、まあ何の本かはよくわかりませんが、基調になっているのはフロムかもしれません。
文中、とても我田引水的に納得できる文章がありました。
「自立とは、多数の他者に依存できる状態をいう。
いつでも頼れる人が100人ほどいれば、誰にも隷属しないでいられる。」
この文章に従えば、私はかなり「自立」しています。
誤解もありますが、私には困ったら助けてくれるだろう友人がたくさんいるのです。
そう思い込んでいるので、あえて「自立」しなくてもいいと思っているのですが、この本によれば、それこそが「自立」なのです。
もっとも、私の友人がいざとなったら私を支えてくれる保証は皆無です。
大切なのは、その事実ではなく、私がそう思い込めていることなのです。
私は勘違いの多い人間ですから、事実でない確率のほうが圧倒的に高いでしょうが、まあそんなことは瑣末な話です。
これ以外にも、「目からうろこ」の示唆がたくさんあります。
昨今の社会にいささかの違和感をお持ちの方、お暇だったら読んでみてください。
面白さは保証しません。私の勘違いかもしれませんので。
コモンズ書店
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