■経済とは自然を消費すること
経済とは何か。
昨日の続きです。
書き出すと止まらないのも私の悪癖ですが。
経済時評では時々それらしきことも書いていますが、経済のシステムは実に思考の対象としては魅力的です。
一般に近代経済システムは、資本の自己増殖によって拡大していくオートポイエティック(自己創成的)なシステムといっていいでしょう。
しかし、私の経済学の定義はそうではなくて、もっとシンプルです。
自然を商品化すること、つまり自然を消費すること、それが近代社会の経済だろうと思っています。
20年程前に書いた「脱構築する企業経営」の連載記事では、「消費機関としての企業」という節を設けましたが、この単純な「経済観」に従っています。
こういう見方をすると、環境問題もよく見えてきます。
経済学では有名な労働価値説があります。
このブログでも時にその発想に従って書いていますが、労働が剰余価値を生み出すということを正確に言えば、自然の価値を貨幣価値に変換するのが労働だということです。
労働によって生み出された商品価値は、そのために投入された労働を支える商品価値を上回るということです。
しかし、そもそもの価値の源泉は労働にあるわけではなく、自然にあります。
そう考えると企業活動の生産性や社会的視点からの生産活動の意味は全く変わってくるはずです。
これも先の小論で書きました。
自然の持っている潜在的な価値、つまり自然そのものの価値を、顕在化する、つまり人間にとっての使用価値に転換するのが近代社会の「経済活動」です。
それによって貨幣価値に転換できる商品価値が生まれます。
このことが貨幣の自己増殖を意味するのでしょう。
しかし、貨幣が貨幣を生むわけではありません。
貨幣が産卵するのを、私は見たことがありません。
マジシャンのセロや前田さんが、1枚のコインを10枚に増やしたりするのを見たことはありますが。私の机の上にある紙幣が増殖するのを目にしたことはありません。
今までは存在しなかった商品価値を、自然の中から顕在化させると、世の中の商品価値の総量は増加します。
配分の仕方にもよりますが、人々の生活は豊かになりそうです。
しかし、そのときに、もし通貨量が変わらなかったらどうなるでしょうか。
商品の貨幣価値は下がります。つまり貨幣価値が高まります。
しかし、商品の総量が増えると通貨の流通速度は加速されます。
それによっては、時間軸を入れると通貨量が増えることになるかもしれません。
そうなると逆に商品の貨幣価値は上昇し、インフレに向かいます。
そうなると、人々の生活は貧しくなることも起こりえます。
とまあ、こういうように話はどんどん面白くなっていきます。
複雑になっていくといってもいいでしょうか。
そして挙句の果てに、金融工学の魅力に取り付かれていくわけです。
しかし、経済とは自然を消費することだという考えに立てば、経済を考える課題は簡単です。
経済成長はできるだけ避けるべきなのです。
経済を成長させないようにしながら、みんなが豊かになることを考えることが、これからの経済の課題でなければいけません。
マルクスは「資本主義経済の持続不能性」を見通していたようですが、経済とは自然を消費するものだと考えれば、私のような凡人にも経済には先がないことはよくわかります。
ですから無駄遣いは自然としなくなりますし、経済成長への共感もなくなります。
大学時代、私は経済学が全く理解できませんでした。
最近ようやく経済学の面白さを知りました。
来世では、ぜひ経済学を学びたいと思っています。
その頃の経済システムはどんなものになっているのでしょうか。
いささか心配です。
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コメント
経済に人間は振り回されます。
お金があったら幸せになると信じている。
でも経済は人間が生み出した道具でしかないので、道具を持つことが幸せだとは思えません。
道具に使われるのは情けなく思います。
人間は不満を持つ生き物でもあり、足りていても何時しか不満を持つようになります。
先人は「足るを知る」という言葉を残しましたが、すでに忘れ去られた言葉かもしれません。
幸せは心の中にのみ存在するもので、幸せだと感じる心なくしては幸せにはなれないと感じています。
足りないことを嘆くより、今あるものに感謝する気持ちが大事なのだと思います。
自分もまだそこまで到ってはいないのですが。
投稿: 斉藤聖子 | 2009/04/05 22:12
斉藤さん
ありがとうございます。
経済に振り回されないように、自分たちの暮らししをしっかりとつくっていきたいですね。
三沢のまちにも、花が咲き出したことでしょう。
なかなか行けませんが、花の三沢が目に浮かびます。
投稿: 佐藤修 | 2009/04/06 07:24