« ■NPOの2つのミッション | トップページ | ■節子への挽歌597:美野里町の牡丹 »

2009/04/21

■消費力開発が最大の企業の戦略課題という恐ろしさ

日立グループの会社が「エコ偽装」事件を起こしてしまいました。
朝日新聞はこう報じています。

リサイクル素材を使った「省エネ」製品として売っていた冷蔵庫9機種に、実際にはその素材をほとんど使っていなかったとして、公正取引委員会は20日、日立製作所の家電子会社「日立アプライアンス」に景品表示法違反で排除命令を出した。消費者の誤解を招く不当表示にあたると認定した。
この冷蔵庫は、財団法人「省エネルギーセンター」の省エネ大賞で同センター会長賞を受賞していたそうです。
なぜかテレビで盛んに報道されていますが、日立は「開発部隊と宣伝部隊が持っていたデータの違い」などと「最悪の釈明」をしているのも気になりますが、こうした事件の奥にある問題をしっかりと認識する必要があります。
ここには様々な問題が示唆されており、おそらくきちんと書き出したら1冊の本になるでしょう。

今回は「消費力開発」に関してだけ書こうと思います。
現在の経済の枠組みが方向づけられたのは、1940年代のトルーマン米国大統領の「開発戦略宣言」だろうと思いますが、その後、経済は「市場創造」を最大の課題にしてきました。
それに呼応するように、経営学は「顧客創造」と「イノベーション」を中心にしてきました。
その象徴がドラッカーです。
私は、会社に入った年にドラッカーを読んで、企業経営というものに大きな疑問を抱き、それが私の「経営学」への不信を育ててきてしまったのです。
経済の目的は、市場の創造ではなく、生活を豊かにすることだろうと、素朴に思っていましたから。
それでもまだ当初は、生活と市場創造はつながっていました。
その乖離が見え始めたのは1970年代でした。
ラルフ・ネーダーのコンシューマリズムが、それを可視化していったのです。
日本でも、たとえば「消費者連盟」のように、それまでの主婦連型の消費者運動とは発想を変えた動きが出てきました。
しかし、大きな流れは止めようもなく、消費開発によって生産を増やしていくという、生活にとっては本末転倒な経済が肥大化してきます。

生活していくための消費は限界がありますので、そこで編み出されたのが「記号消費論」です。
これが1980年代のバブルを主導しました。
それが挫折すると、今度は通貨を商品に仕上げて、金融の大衆市場を創出しました。
その限界が露呈したのが、この数年です。

日立の「エコ偽装」事件は、こうした流れ、ちょっと遅れたエピソードの一つです。
つまり、「エコ」概念が市場拡大に使われただけの話です。
企業の世界でブームになる、環境経営やCSR、ユニバーサルデザイン、安全性、そうしたものは結局は市場拡大のための材料に終わってしまっているのです。
しかも、問題は、そうした「概念」さえもが「浪費」されてしまっているわけです。
漢字検定が問題になっていますが、省エネ大賞だって同じようなものです。
国民も企業もなぜか「資格」を求めますが、それは自らに内容もなく自信がないからでしかないでしょう。
省エネ大賞受賞などと大々的に謳っている商品にいいものなどあるはずがありません。
「いい」というのは誰か(企業や検定機関)の利益になるという程度の意味しかないのです。
少し言いすぎでしょうか。
資格や肩書きは内容のないことの補償行為ですから。

なんだかまた前置きで終わってしまいそうです。
「消費力開発」と言う言葉は、昨年、私が「発見」した(と思っている)概念なのですが、いつかそれを書きたいなと思っていました。
今日の早朝のテレビを観ていて、それを思い出して書きだしたのですが、項を改めて、明日、きちんと書くことにします。

一言だけ書いておけば、「消費力開発が最大の企業の戦略課題」という視点を持てば、昨今の企業不祥事はもとより、企業の言動の多くが理解しやすくなると共に、たとえば最近の派遣切りなどがいかに企業にとっても間違った選択なのかがわかってきます。
上海でのモーターショーにトヨタをはじめ、多くの自動車メーカーが積極的に取り組んでいますが、これまでの枠組みからまだ抜けられていないようです。
「消費力開発」に依存した企業経営や経済の恐ろしさを認識しなければいけません。

|

« ■NPOの2つのミッション | トップページ | ■節子への挽歌597:美野里町の牡丹 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■消費力開発が最大の企業の戦略課題という恐ろしさ:

« ■NPOの2つのミッション | トップページ | ■節子への挽歌597:美野里町の牡丹 »