■「生活世界の植民地化」
地元のNPOネットワーク関係の方から電話がありました。
大会で行なうシンポジウムへの参加の打診です。
他のパネリストは県と市の職員の方だそうです。
私が入ると混乱するのではないかとお応えしましたが、そのやり取りの中で気になる発言がありました。
まさに昨今のNPOの実情を象徴しています。
念のためにいえば、電話を下さった方はとても誠実な方で、長年の企業勤務を卒業して、地元のNPOのネットワーキングの活動に取り組んでいます。
気になった言葉は次の二つです。
「最近は手弁当で参加してくれる人が少なく、何がしかの報酬がないとなかなか人が集まらない。それで佐藤さんが話していた事業型NPOの話をしてほしい」
「NPO活動の集りなどの動員をしても最近は集りが悪い」
実は以前も別の方から同じような話を聞きました。
こうしたことに関してはもう10年程前に各地で話題になったことでもあります。
我孫子の市民活動は行政主導できていますから、かなり遅れている感じがします。
最初の意見には、5年前に話した事業型NPOと昨今の事業型NPOとは、似て非なるものと思っていますので、何をいまさらといささか感情的に反応してしまいました。
「手弁当で参加するのが地元での市民活動の基本ではないでしょうか」
「昨今の事業型NPOと地場企業とはどこが違うのでしょうか」
後者に関しては、「動員などという発想を捨てないといけないのではないでしょうか」
「面白ければ、あるいは活動に意義があると思えば、自然と人は集まりますよ」
電話を終えた後、自己嫌悪に陥りました。
せっかく電話してきてくださったのに、失礼な対応をしてしまいました。
私には日本のNPO法への不信感があります。
NPOが開く市民社会は、市場経済や国家統治の世界とは別の活動原理を大事にしなければいけません。
行政の傘下にいる限り、NPOは育ちません。
「社会貢献」などと発想することは、所詮は国家行政(国益)への奉仕でしかありません。
そこには主体性が見えてきません。
ハーバーマスは、自発的な生活世界のなかに、国家の法システムや市場経済をとおした貨幣が浸透してくる状況を、「国家と市場の複合システムによる生活世界の植民地化」と呼びました。
昨今の日本のNPOの実情は、まさに植民地化されたサブシステムのような気がします。
しかしながら、今の社会状況をどうブレイクスルーしていくかと考えれば、私が違和感を持っているNPOにしか期待できないのかもしれません。
少なくとも違和感をもってイジイジしている私よりも、昨今のNPOは大きな役割を果たしています。
批判よりも行動、なのです。
そう思って、いろいろと活動を始めましたが、どうも疲れます。
最近どうも生き方を間違えているのではないかという気がして仕方がありません。
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