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2009/04/28

■節子への挽歌604:「愛する人」と「愛」

節子
「オーシャンズ11」という映画があります。
学生の頃観た「オーシャンとその11人の仲間」のリメイク版ですが、なかなか面白く、何回も観ているのですが、11人のグループがラスベガスのカジノの金庫から莫大なお金を盗むという話です。
その計画を立てた主人公の真の狙いは、実は別れた恋人をカジノのオーナーから取り戻すことなのですが、映画では見事にお金と元恋人の両方を手に入れます。
元恋人を取り戻すための策は、お金と「女」のどちらを選ぶかをカジノのオーナーに言わせ、それを元恋人に見せることです。
その本音を言わせるために、生命をかけた資金奪取計画を実行するわけです。

愛する人を失ったらどうするか。
妻を取り戻すために彼岸に行った神話は各地に残っています。
日本では、黄泉の国にイザナミを迎えに行ったイザナギの話がありますし、ギリシア神話には有名なオルフェウスの話があります。
いずれも、しかしあと一歩のところで、成功しない悲劇として語られています。
失ってしまった、愛する人を取り戻すのは難しい話です。

「オーシャンズ11」の主人公のダニーが取り戻したのは、「愛する人」ではなくて、実は「愛」でした。
この2つは混同されがちですが、少なくとも日本の少し前までの文化では別物でした。
最近、社会が壊れだしている一つの要因は、「愛する人(もの、こと)」と「愛」を混同していることかもしれないと、最近、思うようになりました。

「愛」を失っていないが故に、「愛する人」を取り戻したくなる。
これが1年前の私の気持ちでしたが、今は違います。
「愛」を失っていないのであれば、「愛する人」もまた失っていないのではないか。

映画「オーシャンズ11」を観ながら、こんなことを考える人はいないでしょうね。
まあ、人生の支えを失ってしまうと、思考の迷走に陥ってしまうものなのです。

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