■節子への挽歌628:会社の経理の仕事
節子
株式会社コンセプトワークショップはまだ倒産せずに健在です。
といっても、この会社はこの4年ほど、ほとんど休業状態なのです。
最近の年間収入は事務所経費を賄うのがやっとの状況ですので、会社の解散も考えたのですが、借金もあり簡単には廃業できません。
それに、節子と一緒にやってきた会社ですので、私が元気な間は続けることにしました。
私の給料はこの3年間ゼロですが、3年前からは税理士へ支払う余裕もなくなったので、昨年から私が自分で決算書類を作成しています。
節子が元気だったころは、会社の経理は節子が窓口になって税理士に頼んでいましたので、私はそうしたことからは全く解放されていました。
お金のことを気にせずに、やりたいことだけをやるという幸せはなくなってしまいました。
節子も税理士もいなくなって、自分でやってみるとけっこう面倒です。
この面倒なことを節子に任せていたことを悔やんでいます。
節子も、決して向いているとはいえない種類の仕事でしたから。
昨日1日、1年分の経理処理をしていたのですが、途中で嫌になってしまい、まあだれもみないだろうし、どうせ赤字なのだから税務的にもそう正確でなくてもいいだろうとかなり手抜きをしてしまいました。
私は手抜きがうまいのです。
人生においてもかなりの手抜きで生きてきました。
しかし、節子は手を抜くのが不得手でした。
私から言えば要領が悪いのですが、手を抜けない節子が会社の経理の仕事をいつも負担に感じていたのを思い出します。
節子はそれが自分の仕事だと決めていました。
そこが節子の健気なところなのですが。
経理の仕事で、楽しいこともなかったわけではありません。
お金がなくなったけどどうしようか、という相談は実のところ楽しかったです。
足りないといってもたかが知れていますので、切実感はありませんでした。
何しろ2人だけの会社ですから、お金がなくなれば給料をもらわずに、不足分をどこかで稼いで充当すればいいだけの話です。
なにしろ私たちの会社は、仕事をすればするほど出費が増えて、収入は増えない傾向があったのです。
まあいつも質素に、小さく活動していましたから、不足してもせいぜい事務所の家賃を払えない程度の話です。
身の程に生きていれば、破局など起こらない、と私たちはいつも考えていました。
もっとも、そこまで来るには、それなりの苦労もあり、私の25年間の会社生活があったわけですが。
事務所家賃を払えずに、むすめたちの定期預金を解約させたこともあります。
しかし、家族とはそんなものでしょう。
それがわが家の文化でした。
でも、こうやってお金を気にせずに生きていけることはとても恵まれているのでしょう。
こうした状況を残していってくれた節子にとても感謝しています。
さて、肝心の会社の経理ですが、一瞬、黒字かと思ったのですが、やはり計算違いで、かなりの赤字でした。
今年度も1円ももらえませんでした。
本気でお金がもらえそうな仕事を探さなければいけなくなりそうですが、問題はそうした仕事をする時間があるかどうかです。
そうした相談をする相手の節子がいないのが、残念です。
2人だと楽しいことも、一人だと辛いことになるものです。
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