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2009/07/22

■「デュヴェルジェの法則」と「レイプハルトの確信」

政権交代には2つのタイプがあります。
政党間の政権交替と、政権基盤の交代です。
今回の日本の選挙での政権交代は前者であり、二大政党間の権力争いともいえます。
その背後で、もっと大きな政治の変化の潮流が動き出しているように思いますが、ほとんどの人は「二大政党制論」の呪縛の中で、政権基盤の交代の動きにはむしろ棹差すことになるでしょう。
ここが実に悩ましい問題です。

フランスの政治学者モーリス・デュヴェルジェは、政治対立は必ず二者の対立になるものであって、二党が対立することが良いと考えました。
また、小選挙区制が二党制を生み、比例代表制が多党制を生むという「デュヴェルジェの法則」を提唱しています。
日本はこの政治観で政治改革を進めてきたわけです。

こうした二大政党制論に対して、二大政党制を多数決型民主主義とし、多党制を合意形成型民主主義(コンセンサス型モデル)とし、多くの面において合意形成型民主主義が優れているという主張したのが、アメリカの政治学者アーレンド・レイプハルトです。
私は、民主主義の本質は多数決という「量の問題」ではなく、「少数者の尊重」という「質の問題」だと考えていますので、当然、「レイプハルトの確信」に共感しています。
ネグリの「マルチチュード」もまた、その多様性に力を見出しているように思います。

但し、レイプハルトの「合意形成」という言葉には、いささかの注釈が必要かもしれません。
合意というと、「一つの結論」と多くの人は考えますが、そんなことはなく、「複数の結論」での合意もありえます。
それは、時間幅をどう捉えるかという、まさに「生命のリズム」にもつながる問題です。

日本の政権交替選挙は、どう展開していくか、まだわかりませんが、私の希望的観測は「民主党は過半数をとり、自民党は解体する」というものです。
つまり結果的に、二大政党の崩壊です。
しかし重要なのはそのことではなく、共産党、国民新党、社民党が伸びるかどうかということです。
私はいずれの政党も好きではありませんが、論理演算でいえば、伸びるべきです。
しかし、それもまたなかなか難しいかもしれません。
論理はともかく、感性がどこかで間違っているからです。
社民党の福島さんの「物言い」には誠実さが感じられません。
実体もあり誠実なのでしょうが、言葉づかいが的確ではないように思います。
共産党は、実体もあり、誠実さも感じますが、「共産党」という名前の呪縛に負けていますので、コミュニケーションできない体質を持っています。
それに気づかないのは、彼らに知性がない現われでしょう。
未来を託そうと思う人は増えないでしょう。
国民新党は終わった人たちのルサンチマンでしかありません。
しかし、彼らが提起しているメッセージはとても大切で本質的なように思います。

伸びるべきだといいながら酷評してしまいました。
田中さんの新党日本はどうでしょうか。
これは面白いですが、伸びようがありません。

そんなわけで、結局、民主党しか伸びないことになるのですが、自民党を解答して生まれた新しい政党郡が意外と伸びるかもしれません。
そうなれば、二大政党制の流れが変わるかもしれませんし、小選挙区制の見直しの運動(既にあります)が高まるかもしれません。

政治の大きな流れの転機(後者の政権交代の始まり)になる可能性は十分あります。
そうした大きな目で、この選挙を見ていこうと思っています。

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