■節子への挽歌737:人は泣くことによって、悲しさの意味を変えられる
昨日、笑いのことを少し書きました。
そこで思い出したのが、ジェームズ・ランゲ説です。
人は楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだという考えです。
一緒に暮らしだした頃、節子とよく話した話題の一つです。
節子がそのことを覚えていたかどうかはわかりません。
しかし病気になっても節子は笑うことをとても大事にしました。
私が話したジェームズ・ランゲ説は、節子の中にしっかりと実践されていたように思います。
さびしさや悲しさを吹っ切るには、笑うのが一番です。
しかし、さびしさや悲しさに身を任せたいときもあります。
人の前ではそういうことはあまりないのですが、一人でこの挽歌を書いたり、節子の思い出のあるものに接したりしている時に、突然、涙が出てくることがあります。
涙が出るのが先なのか、悲しくなるのが先なのかは、微妙です。
しかし、涙が出てくるとますます悲しくなることは間違いありません。
一人のときは、涙が出てくるのに任せます。
もっと泣きたいと思うと涙はいくらでも出てきます。
涙がある程度出ると、心がとても静まり、逆に悲しいけれどもとても穏やかな気持ちになれます。
節子となんとなく通じ合ったような幸せさがやってくるのです。
さてそこで最近気づいたのは、
「泣くことからもたらされる悲しさ」と「泣くことを引き起こす悲しさ」とは、別のものではないかと言うことです。
さらにいえば、「笑いが引き起こす悲しさ」もあるのです。
笑いでさびしさや悲しさを吹っ切ることができると書きましたが、これはあまり正確ではありません。
ただ封じ込めるだけかもしれません。
その反動は、かなり大きいからです。
こうしたことはなにも愛する人を失った時だけではないでしょう。
人はいつも「さびしさ」や「悲しさ」、そして「楽しさ」や「喜び」の中で生きています。
それらが合わさって「幸せ」になるのだろうと思います。
「さびしさ」や「悲しさ」のない「幸せ」はありえないような気がします。
愛する人を失った時、それがあまりに突然なので(どんなに予想されていても「突然」の断絶であることには違いはありません)、感情が麻痺してしまいます。
その事実を受け容れられずに、笑ったり騒いだりしたくなります。
不思議なほどに実感できないのです。
その事実を受け容れられるようになると、初めてさびしさや悲しさが襲ってきます。
しかし、同時に、笑いや喜びも戻ってくるような気がします。
「人は悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ」ではなく、
「人は泣くことによって、悲しさの意味を変えられる」
ということを、最近、実感しています。
なにやら突然飛躍した結論になってしまいましたが、この行間にはたくさんの私の思いがつまっています。
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コメント
「人の前ではそういうことはあまりないのですが、一人でこの挽歌を書いたり、節子の思い出のあるものに接したりしている時に、突然、涙が出てくることがあります。
涙が出るのが先なのか、悲しくなるのが先なのかは、微妙です。
しかし、涙が出てくるとますます悲しくなることは間違いありません。
一人のときは、涙が出てくるのに任せます。
もっと泣きたいと思うと涙はいくらでも出てきます。
涙がある程度出ると、心がとても静まり、逆に悲しいけれどもとても穏やかな気持ちになれます。
節子となんとなく通じ合ったような幸せさがやってくるのです。」
わたしの気持ちと全く同じだなあと思いました。
4年たちましたが、
“突然、涙が出てくる”ことは、これからもずっと続くのでしょうね。
CWSコモンズの船上の満月、きれいですね。
満月の中に、節子さんが微笑んでいらっしゃいますね。
節子さんとお会いできたようで、とてもうれしかったです。
投稿: 大浦静子 | 2009/09/08 07:33
大浦さん
いつもありがとうございます。
そうですね。
突然ですね。
なんでも原因になるのです。
船上の満月
不思議のその日は晴れ渡り、暑さもなく、風も快適でした。
暗くなってからの満月もですが、日暮れ時の満月もとても幻想的でした。
大浦さんのお住まいのお近くの千里浜海岸で、25年ほど前にすばらしい夕陽を見たことがあります。
私の住んでいるところからも夕陽は見えるのですが、日本海に見える夕陽は感動的ですね。
投稿: 佐藤修 | 2009/09/10 13:54