■節子への挽歌730:ヘビの抜け殻
庭の池の近くの草薮に1メートルくらいの長さのヘビの抜け殻が残っていました。
ジュンが、縁起がいいからとそれを節子の位牌壇の前に飾りました。
なぜ縁起がいいのかと聞いたら、節子から聴いた話だというのです。
小さい頃、節子と一緒に実家の近くのお宮さんでヘビの抜け殻を見つけたそうなのですが、「ヘビの抜け殻を財布に入れておくとお金が貯まる」と節子が話したのだそうです。
節子はヘビ嫌いでしたから、たぶんその時はその会話だけで終わったはずです。
もし節子が抜け殻を財布に入れておいてくれたら、私ももっと贅沢ができたかもしれません。
ちなみに、私は巳年、ヘビ年です。
そして、節子は酉年。
節子は、鳥を飲み込むヘビが嫌いだったはずです。
しかし、酉にも人や生き物を飲み込む意味があります。
私たちは、お互いに飲み込む合う関係だったのかもしれません。
それはともかく、そんなわけで、いま節子の位牌壇の前には蛇の抜け殻があります。
もしかしたら、これからわが家にはどんどんお金が溜まるかもしれません。
節子がいなくなったいま、お金などあっても何の意味もありませんが。
ヘビはお金を呼ぶだけではありません。
民俗学者の吉野裕子さんの本で、神とは「蛇(カ)の身(ミ)」に通ずると読んだのを覚えていますが、ヘビ信仰は世界各地に残っているようです。
見事に脱皮を繰り返すヘビは「再生」する永遠の生命を感じさせるからでしょう。
脱皮して、新しい身体を得るということは、すべての生命体の本質かもしれません。
キリスト教などではヘビが悪役で登場しますが、それは唯一神信仰を成立させるためだったという説もあります。
それほどヘビ信仰は原始信仰には広がっていたわけです。
明後日は節子の3回忌ですが、その直前にヘビの抜け殻が出現したのも、それなりの理由があるのかもしれません。
ところで脱皮したヘビはどこにいるのでしょうか。
狭い庭のどこかにいると思うとあまりいい気分はしません。
私も節子と同じく、ヘビが大嫌いなのです。
ヘビの抜け殻も、正直、あまり室内に置きたい気分ではないのですが、ジュンが節子の言葉を守って、一番いい場所に抜け殻を置いています。
まあ3回忌が終わるまでは仕方がありません。
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