■節子への挽歌767:荒ぶる心のバランサー
節子
昨夜、茂さんたちと話していて遅くなったので、湯河原に泊まってしまいました。
青木が原の後、熱海の錦ヶ浦を見に来たのです。
ところが、台風のために電車が止まってしまい、閉じ込められてしまいました。
伊勢湾台風以来の強い台風のようです。
不謹慎ですが、私は台風が大好きです。
というか、自然の強い動きになぜか心が高揚するのです。
こういう話をするといつも節子に怒られました。
被害を受けた人の気持ちがわかっているの、というのです。
たしかにそうですが、心がうずくのはとめようもないのです。
近くの利根川の堤が決壊し、いつもは静かな田園風景が一面の水面になり、そのところどころに樹木が立ち上がっている風景には感動しました。
まさに不謹慎なのですが。
自然の威力によって秩序が破壊されることを、どこかで望んでいる魔性が、私の心の中にあるのです。
誰の心にも、そうした「荒ぶる心」や「破壊願望」はあるのだろうと思いますが、もしかしたら私の場合、それが少しだけ強いのかもしれません。
静かな空を見るのも好きですが、荒れ狂う空も好きなのです。
そこから聞こえてくる天の悲鳴にも心が動きます。
荒ぶる心、荒ぶる自然。
今日は午前中、風の吹きすさぶ音を聞きながら、荒ぶる自然に心をさらしていました。
無為に外を見ていたのです。
いろいろな思いが去来します。
そのせいか、なにかたまっていた心のわだかまりが消えたような気がします。
節子
時に夫婦喧嘩をしていたことの意味がなんとなくわかったような気がします。
あれが私たちの、いえ、私の心のバランサーだったのかもしれません。
晴れてきました。
新幹線も通常に戻ったようです。
東京に戻ることにしました。
節子と一緒だったら、もっとゆっくりできたのでしょうが。
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