■節子への挽歌835:ジュンの伴侶が決まりました
節子
今日は、とてもうれしい、しかしとてもさびしい日でした。
ジュンと結婚する相手が正式に挨拶にきたのです。
まあこれまでも何回も会っていますが、最終的に結婚を決めたというのです。
その青年(峰行さんといいます)は、柏でイタリアンのレストランをやっています。
といっても、どちらかといえば、趣味でレストランをやっているような好青年です。
経済的にはたぶんジュンは苦労するでしょう。
しかし、もともとわが家はお金とはあまり縁のない家庭です。
節子と私の文化は、お金からどれだけ自由になれるかでした。
手元にあるお金で生活するという生き方、それが私たちの基本でした。
娘たちは、子どもの頃、お小遣いが少なくて苦労したという話を後で聞きました。
子どもにお金はいらないだろうというのが私たちの考えでしたが、どうも世間は必ずしもそうではなかったようです。
娘たちは、わが家は貧乏なのだと子供心に思っていたそうです。
そのことを知って反省しましたが、そのおかげで娘たちもお金に無頓着な生き方になりました。
ジュンもまたお金がなくても豊かに生きている術を身につけました。
しかし、私の場合は、それでもそれなりに豊かな時代にすんでいましたから、何とかなりましたが、いまの社会の状況はかなり違います。
お金なしに生きていくのは難しいかもしれません。
それにレストランで生計を立てるのは、そう簡単でないことは私もよく知っています。
働く時間帯も、会社に勤めている人とは違います。
ジュンは、子どもの頃以上に経済的には苦労するかもしれません。
親としては、悩まないわけではありません。
しかし、もしかしたら、苦労するのはジュンではなく彼かもしれません。
なにしろジュンは「しっかり者」で、いささか個性的ですのですので。
人柄は、私に似ていますので、良いともいえますし、悪いともいえます。
節子と同じ苦労を、彼はさせられるかもしれません。
彼は私以上に、「天然」で楽観的なのです。
しかも、ジュンにいわせれば、私と違ってとてもやさしくて、決して怒らないのだそうです。
節子はきっと気にいったでしょう。
節子も天然でトンチンカンだったから、賛成したはずだとジュンも言います。
伴侶に大切なのは、お金よりも人柄です。
人柄で生活を守れるかと言われたら、いささか悩むところですが、もしかしたら彼のレストランが大流行するかもしれません。
なにしろすでに5年以上、いまのレストランを自分で経営し、固定客も少なくないようです。
ともかくジュンは結婚を決めました。
そしてなんと年が明けた元日の朝に入籍するのだそうです。
なんだか私たちと同じです。
節子がいたら、その類似に、どんなに笑い転げて喜ぶことか。
節子がとなりにいないのは、とてもさびしく辛いです。
娘が結婚することのさびしさは、まったくといってほどないのですが、一緒に喜ぶはずの節子がいないことがとてもさびしいです。
なんだか節子と一緒に、新居を持った頃のことが思い出されて、うれしさとさびしさが同居しています。
でもまあ、節子、ちょっと安心してください。
私ほどではないでしょうが、良い人です。
ジュンに言わせれば、私よりもずっと良い人です。
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