■caring economics
私は会社時代、女性社員が来客にお茶を出す仕事と経営参謀スタッフが会社の長期計画を立てる仕事と、どちらが大切かといえば、前者であると考えていました。
それは前者の仕事は直接人の気持ちを相手にしているだけでなく、人と人とのつながりを創りだす重要な役割を持っているからであり、やり直しができない仕事だからです。
当時、同じ職場の女性社員にもそう話しましたが、だれからも相手にされませんでした。
また私の仕事を手伝ってくれていた女性には、たとえ私が頼んだ仕事でもやりたくなかったら断っていいと話していました。
私の最高の批判者は部下(私は仲間と考えていましたが)だと思っていたからです。
彼女は退職後、私の所に来て、その言葉にはとても戸惑ったと白状してくれました。
私は会社時代、たとえ新入社員でも「さん」づけで呼びました。
逆に上司も「さん」づけで、職位で呼んだのは社長だけでした。
もう20年以上前になりますが、それが私の会社時代の考えでした。
いずれも特殊すぎて、いまだなお賛成してくれる人は少ないでしょう。
しかし、昨日読んだ「ゼロから考える経済学」は、そうした内容の本でした。
もちろんそんなことはどこにも書いていませんが、そう思いました。
ゼロから考える経済学というのは翻訳書名ですが、原題は “caring economics” です。
いささか我田引水の昔話になりますが、この本には私が学生の頃から考えていたことや私の生き方につながっていることなどがたくさん出てきます。
私の生き方は、必ずしも常識的でなく、友人たちの共感はあまり得られていません。
興味を示す人や感心してくれる人はいますが、同伴してくれる人は多くはありません。
もっとも、以前は私の言葉を真に受けない人が多かったですが、最近は一応信じてくれるようになりました。
しかし、どこかで「特殊」とみなされているのでしょう。
先日の集まりでも、「佐藤さんだからできる生き方」だといわれました。
そんなはずはありません。
私でできるのであれば、誰でもできるはずです。
但し私の場合も、20代の頃からこの生き方を続けていればこそ、今もなおこの生き方ができるのかもしれません。
いずれにしろ、新しい経済パラダイムがこの本に垣間見える気がします。
この本の問題提起の文章を引用させてもらいます。
興味をもたれたらお読み下さい。
私たちは誰ひとりとして、思いやること(caring)と世話をすること(care giving)なしにはここに存在してはいないのだと考えてほしい。家庭も、労働力も、経済も何ひとつとして存在しないだろう。それなのに、現在の経済に関する議論は、思いやることと世話をすることに触れる事すらしないものが大半である。
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