■豊かさの足元にこそ貧困はある
しばらく休んでいた湯島でのオープンサロンを再開しました。
そこで生活保護や貧困の問題が少し話題になりました。
昨日集まった人たちの中には、貧困問題に少し関わっている人もいましたが、多くの人たちにはたぶん「見えない世界」なのだろうと、改めて思いました。
そこで昨日書いた子どもの問題につなげて、少し「子どもの貧困」のことを書きたいと思います。
「子ども貧困」というとみなさんは何を思い出すでしょうか。
スーダンのやせた子どもの写真を思い出す人は少なくないと思います。
しかしアフリカの子どもたちだけが貧困状況におかれているわけではありません。
子どもの貧困が語られる時にアフリカの子どもたちの写真が使われることに、私は大きな悪意を感じます。
そうした写真こそが、日本の、あるいは経済システムの現実を隠すことにつながっているからです。
OECDの貧困率のデータ(2008年)によると、日本の子どもの貧困率は13.7%です。
つまり、子どもの7人に1人が貧困状況にあるということです。
成長に必要な食事さえ十分にとれない子どもも少なくないのです。
ちなみに、アメリカの子ども貧困率はもっと高く、20%を上回っています。
アフリカではなく、アメリカです。念のため。
このことは何を意味するのでしょうか。
先進国といわれる国家は、同時に貧困問題を内在させているということです。
昨日の集まりで話のきっかけになったのが、北海道出身の人が自分の地域では人口の5%近くが生活保護を受けていると話したことでした。
5%というのは異常値だというニュアンスでしたので、私は異議を唱えたのです。
確かに5%は高い数字です。
厚生労働省の発表によれば、日本の被保護世帯数は既に120万世帯を超え、間もなく150万世帯に達するといわれています。
日本の全世帯数は約4800万世帯ですから、比率にすれば3%程度です。
しかし問題はそこからです。
所得が生活保護支給基準以下である人たちすべてが生活保護を受けているわけではありません。
受けたくても受けられない人も日本では少なくないのです。
該当者が実際に受給している割合を示す「捕捉率」の異常の低さが日本の特徴です。
日本では約10~20%といわれています。
若者の餓死は日本でも起こっています。
数年前に、このサロンで健康保険に入れなくて病死する人がいるという話をしたことがありますが、参加者は誰も私の話を信じませんでした。
それくらいみんな日本における貧困の実態には無知、あるいは無関心です。
子どもの貧困は決してアフリカの問題ではありません。
アフリカは、先進国が国際協力の名目で「援助」してこなかったら、絶対的貧困は起こらなかったかもしれません。
ドラッカーが言い出した顧客の創造戦略が、世界中に相対的貧困を発生させ、その結果、絶対的貧困が起こったのです。
豊かさの足元にこそ貧困はある。
私たちはそのことをもっとしっかりと見なければいけません。
「子どもの貧困白書」が昨年出版されました。
機会があればぜひお読みください。
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