■住民が求めている暮らしと経済
最新号の軍縮問題資料(2010年4月号)に、立命館大学非常勤講師の池尾靖志さんが「沖縄の『軽減』負担とは何か」という記事を寄稿されています・
同誌には毎号、「森口豁の沖縄じゃーなる」という記事も連載されているのですが、その記事のブログ版で、沖縄のやんばるの森・東村高江の米軍ヘリ着陸帯(ヘリパッド)建設問題に関連して、座り込むなどの反対運動をしていた住民たちを国が起訴したという恐ろしい記事を読んでいたため、「高江の現場から」というサブタイトルに魅かれて読んでみました。
池尾さんは、辺野古は報道されるが、なぜ高江は報道されないのかと怒っていますが、私も森口さんのブログを読むまでは、高江などという名前さえ知りませんでした。
沖縄に関する現地情報は、マスメディアには極めて偏ったものしかでてこないのです。
高江の住民運動起訴事件は、ぜひ森口さんのブログ(沖縄日記)を読んでみてほしいですが、私が今回、池尾さんの論文で心に残ったのは、次の文章です。
2月に行われた(政府の)住民説明会では、高江区に暮らす人々の安全を度外視し、豊かな自然の中で静かに暮らすことをのぞむ地元住民の声を圧殺するかのように、一方的に説明が行われた。「豊かな自然の中で静かに暮らすことをのぞむ地元住民」。
私はこれこそが多くの国民の願いだと思っています。
池尾さんの論文によれば、高江は、イタジイやオキナワウロジロガシなどが優先する自然林の残されたやんばるの森の中に位置するのだそうです。
ところが、その高江の集落を取り囲むように、ヘリコプター着陸帯が建設されようとしているのだそうです。
状況は民主党政権になっても変っていないようです。
森口さんはブログで、「これが出来たら四六時中大型ヘリが飛び回って離着陸を繰り返し、住民の静かな生活が奪われるのは明らかだ」と書いています。
もし私がそこの住民であれば、多分座り込みに参加したでしょう。
もしそうであれば、私も起訴されたわけです。
昨日の時評の続きですが、生活者の立場に立てば、経済成長よりも「豊かな自然の中で静かに暮らすこと」を望む人が多いはずです。
わずかばかりの「資産家」願望者のために、国民の多くは生活よりも経済が大切だと思い込まされています。
馬鹿げた話ですが、そうした労働者が多くなければ、最近話題の高額資産家などは生まれないのです。
彼らはどんな理屈をつけようと、貧しい人たちを犠牲にして高収入を得ているわけですが、彼らにはそうした恥の意識や罪の意識はないでしょう。
むしろ資産家リストに載ったことを誇りに思っているでしょうが、私には彼らは恥ずべき人間だと見えてしまいます。
そんなにお金を集めて、一体何をするのでしょうか。
「豊かな自然の中で静かに暮らすことをのぞむ地元住民」を基本にした政治や経済は考えられないのでしょうか。
一番大切なものが見失われていることが、とても腹立たしいです。
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