■知足と有志
昨日、「ねむるところと毎日の食事ができれば、それ以上のことは望まない」、という佐藤洋司さんの言葉を紹介しました。
それで思い出したのが、「知足」という言葉です。
よく聞く言葉ですが、私にはどこかに違和感がありました。
ところが、最近、「知足」には「有志」という言葉がセットになっていることを知りました。
このように、概念の一部が一人歩きすることは少なくありません。
一時期の「陰徳」という言葉もそうでした。
「陰徳」は「陽報」がセットになって、意味が完結しています。
「老子」には、「知足者富」に続いて、「強行者有志」と書かれているそうです。
それで早速、手元にあった「老子」を開いてみました。
第33章にこうありました。
知人者智。自知者明。勝人者有力。自勝者強。知足者富。強行者有志。不失其所者久。死而不亡者寿。「強行者有志」。たしかにありました。
強(つと)めて行う者には志あり、として、志を持って進めと説いているのです。
現状に満足して甘んじよということではありません。
「知足」の意味が、ダイナミックに動き出すのを感じます。
時に儒教は、現状を肯定する諦観の思想と捉えられがちですが、「知足」という思想には、稼ぎ続けるというダイナミズムよりももっともっと強く厳しいダイナミズムを感じます。
ちなみに、知足者富の「富」も、もちろんお金や資産のことではありません。
お金をいくら持っていても、貧しい人はたくさんいます。
世間的な「富者」を見る外に向けたまなざしを、自分自身に向けよと、老子は説いているのです。
つまり、「自知」にして「自勝」、己を知り己に勝てというわけです。
さらにこの言葉に続く「不失其所者久」は昨日書いたことそのものです。
「己にふさわしいあり方を失わぬものは永続きする」。
ここにこそ、経営の基本がありますが、最近の企業はこれを完全に逸脱しています。
私が、経営の不在と言っている意味が、ここにあります。
経営者もたまには「老子」を読んでほしいものです。
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