■日米安保条約第10条
あるメーリングリストで、日米安保条約第10条が話題になっています。
それを読んでいて、昔のことを思い出しました。
私が大学に入ったのは1960年、安保闘争が一番盛り上がっていた年です。
ノンポリの高校生だった私は、そこで鮮烈な洗脳を受けました。
連日、新安保条約締結に反対する国会デモが繰り返されましたが、それはいまでは全く考えられないような動きでした。
日本の社会はまだダイナミックに動いていたのです。
6月には入り、デモに参加していた樺美智子さんが圧死するという事件が起きました。
学生デモはますます盛んになり、ノンポリの私も何回か国会デモに参加しました。
しかし、何かもう一つ熱中できませんでした。
全学連のアジテーションに辟易していたのと混乱した社会の中に物語が見えなかったからです。
続いて社会党の浅沼さんが刺殺され、状況はますます生活者の世界を離れていきました。
私も次第にデモには参加しなくなりましたが、社会の不条理に対する怒りや思いは、そのおかげで深まったような気がします。
その頃、私がデモに参加しなかった理由に上げたのが、日米安保条約第10条でした。
日米安保条約第10条はこういう内容です。
この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。時の流れに抗してまでいま条約批准を妨げるよりも、10年後に廃棄すればいい。
もっとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する
これが私の考えでした。
その当時から、私はプロセスとビジョンを大事にしていました。
条約破棄よりも、条約破棄を目標にして社会を変えていくことのほうが大事だと考えたのです。
その頃から私の時間軸はかなり長いものでした。
能力を超えて急ぎ過ぎると、必ずさらに悪い結果になるものです。
事実、その後の全学連は悲劇的な終末を迎えます。
この日米安保条約第10条を活用することができれば、問題は簡単に解決します。
鳩山首相はその手を使えないでしょうが、もしかしたら使いたがっているかもしれません、
これを使えるのは、おそらく鳩山首相しかいません。
それを止めているのは、私たち国民です。
50年前を思い出します。
何も変わっていないのです。
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