■「自殺」という言葉をなくしたい
先月、三省堂から「自殺をくい止めろ! 東尋坊の茂さん宣言」が出版されました。
筆者は東尋坊で自殺防止活動をされている茂幸雄さんです。
昨日書いた「自殺のない社会づくりネットワーク・ささえあい」の代表は茂さんです。
その関係で、この本にも一文書かせてもらいました。
ホームページに掲載しましたので、もしお時間があればお読みください。
この本を読んだ友人から「佐藤さんの文章だけトーンが違いますね」といわれました。
タイトルは「自殺のない社会に向けて」となっていますが、自殺に関する記述がほとんどないからです。
彼はこの本を読み出して、あまりに重いので先に進めなくなったそうです。
最初のほうには自殺を身近に体験した人たちの文章が並んでいたからです。
気を取り直して、真ん中にある私の書いた文章を読んだそうです。
私のことを知っていることもあったのだと思いますが、すっと入っていけたそうです。
私自身、この本を受け取った時に、その装丁も含めて、これは読んでほしい人には読んでもらえないだろうなと思いました。
筆者の茂さんも編集者の人も知っているだけに、こんなことを書くのは気が引けるのですが、私には問題の捉え方に大きな違和感があるのです。
それはマスコミの報道に関しても同じです。
視聴率のために報道しているのか、とまでは言いたくありませんが、関連番組を見ていて、そのステレオタイプな取り上げ方にはいささかの違和感があります。
報道関係者とも何回か話しましたが、彼らも決して悩んでいないわけではありません。
とても誠実に取り組んでいるのが伝わってはきますが、やはり私には共感できません。
それにここまで報道されるようになったことは関係者の努力のおかげです。
それは私も高く評価しています。
でもどこかに違和感があるのです。
私自身が身近に「自殺」を体験していないための勝手な違和感かもしれませんと思うこともあります。
事実、自死遺族の人からも怒られてこともあります。
しかし私も「自殺」で親しい友人を何人か亡くしています。
会社時代には私をとても支援してくれていた上司が自殺しました。
自殺を考えた友人知人と関わったことも何回かあります。
いやそれ以上に、自らも自殺に決して無縁ではないという自覚はいつもあります。
ですから、そう無関係な生き方をしているわけでもないのです。
そういう立場から考えても、今の自殺問題の取り上げ方は違和感があります。
「自殺」という言葉をなくしたい、と私は思っています。
言葉は現実をつくっていきます。
どうしたら、その言葉をなくせるのか。
私の関心事は、そのことに尽きています。
そしてそれは自分の生き方を変えることからしか始まらないのではないかと思っているのです。
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コメント
自分も何時どうなるかわからないな、と常々思っているので、「考えてもしょうがない」「意図でどうにでもなるものでもない」となってしまい、「死はこの世の出来事にあらず」と放り出している状態です。自分自身に対して「死んではいけない」という気力が昔からないのです。他人に対してどうこうというのは更に出てきません。たまたま生きてるだけ、という感じで、死そのものが日常茶飯事なので、自分にとっては考えるだけ無駄、となっています。生死は人の責任で無いような感じです。他人事なら逆に何か言えるのかも知れませんが。
投稿: s崎 | 2010/05/23 02:44
s崎さん
>「死はこの世の出来事にあらず」
は同感です。
ですが、
>たまたま生きてるだけ
というのはあまり賛成できません。
というか、すべては「たまたま」なのですから、あえて「たまたま」と別扱いすることは、「たまたま」を否定することにもなりかねません。
素直に行き、素直に受け容れるのがいいのかもしれません。
しかし他者の死は、自らの死とはまったく違うように思います。
投稿: 佐藤修 | 2010/05/24 18:41