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2010/06/12

■若者を浪費する社会

今日は、私のホームページ(CWSコモンズ)に書いたこととほぼ同じことを書くことにします。
ホームページの方は、毎週日曜日が更新日ですので、明日、アップされますが。

先週の6月4日に書きましたが、私の古い文章を大学4年の学生が私を訪ねてきてくれました。
とても誠実な若者で、しっかりした就職活動を行っているようですが、まだ就職先が決まっていません。
私が21年前に会社を辞めた時にある雑誌に載せた文章(「会社を辞めて社会に入る」)を読んで、私のところに来てくれたのです。
彼と話していて、怒りがこみ上げてきました。
彼に対してではありません。
私を含めた、今の大人たちの生き方に、です。

非常にしっかりした考えで、就職活動に取り組んでいるのに、働く場が見つからない。
どう考えても、おかしな話です。
大学の先生をやっている友人が少なくありませんが、彼らからも就職活動の厳しさはよく聞いています。
オフレコの約束なので、ここには書けませんが、驚愕の事実もあります。
そうした現実を、大学の先生たちは、もっと社会にきちんと伝えるべきではないかとも思いますが、おそらく社会が「聴く耳」を持っていないのでしょう。

やってきた学生の周りにも、就職を諦めて、フォトジャーナリストになることを決意した友人もいるそうです。
やはりどこかおかしいです。
働きたい若者に仕事も希望も与えられない社会。
どう考えてもおかしいです。
こうした社会にしてしまったのは、私たちです。
とりわけ大きな責任を追うべきは、いま「有識者」といわれ、社会的な職位についている人です。

私は、経営幹部を育てる研修プログラムにささやかに関わっています。
そこに講演に来る人たちを見て、いつも、「こういう人たちが社会を壊したのに、なぜこういう人を呼ぶのだろうか」と不快に思います。
そうした人の話す言葉は、私にはとても虚しく、腹が立ちます。
しかし、彼らにはそんなことなど気づくはずもありません。
日航の再建を任された稲盛さんが自慢話を話すように、自分のやってきたことの意味など気づくはずもありません。
たぶん「悪意」はないのでしょうが、それこそが最悪の悪行なのです。

1億円もらう経営者がいてもいいですが、それほどの高給をもらうのであれば、働く場を創る努力をもっとすべきです。
40年前の経営者は。自らの責任を「雇用の場を増やすこと」と考えていました。
だから日本は元気だったのです。

しかし、そうはいっても、仕事はどんどん減っていくでしょう。
ジョブレス社会の到来は30年前にもうしっかりと予告されていました。
景気が回復しても、仕事は増えるはずもありません。
それに知りながら、なんの対応もしてこなかった経済学者も経営学者も政治家も、私には許せません。
経団連のトップの人たちは、そうしたことを加速してきたのです。
それが犯罪でなくてなんでしょうか。
社会を壊すのは、暴動を起こす必要はないのです。

少子化対策などと馬鹿なことをいっている連中にも蹴飛ばしたいほど怒りを感じます。
希望のない社会にしておいて、子どもを増やせという発想は間違っています。
まあ、私も10年前には少子化は問題だといっていたのですから、恥ずかしいのですが。

彼と話していて、私たちの世代の罪深さを改めて感じました。
若者に希望を与えられない私たちは恥を知るべきです。
そう思いました。
若者を浪費する社会になってきているのが恐ろしいです。
問題は、少子化とか粘菌問題とか、そんな話ではないのです。

私に何が出来るか、それが私にとっての当面の課題です。

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