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2010/06/30

■「責任に時効なし」

思うことあって、小説「責任に時効なし」を読みました。
カネボウの粉飾決算と再生機構による実質的な企業解体のことを取り上げた小説です。
著者は、カネボウの財務担当重役として、まさにそうした動きの渦中にいた人です。
名前を変えていますが、実態を知っている人はおそらく登場人物を特定できるでしょう。
かなり事実に忠実な小説のようです。
ちなみに、冒頭に出てくる副社長は、私の知人です。
もっとも、私が付き合っていた頃のイメージとはまったく違いますが。
ですから彼が逮捕された時に、私はこのブログで今から思えばちょっとピントのずれた記事を書いています。

このブログを読んでいてくださる人はもうおわかりいただいていると思いますが、私はこの30年の日本の財界の有力者たちに大きな怒りを感じています。
40年前に、私は経団連に出向していましたが、その頃の財界には理念や思いを感じていました。
おかしくなりだしたのは、私の感覚では1980年ころからです。
彼らが、私が大好きだった「会社という仕組み」を、おかしな方向に変質させてしまったと思っています。
私には許しがたいことです。

それに加担したのが霞が関とマスコミです。
とりわけ霞が関には不信感が強いです。
と言っても、その頃、私は勤めていた会社の社長に指名されて、通産省の事務次官や官僚との、よくわからない勉強会に参加していました。
勉強会の後の宴会が大嫌いでした。
社長がカラオケが大好きでしたが、嫌いな私はたぶん1回しか歌ったことがなかったと思います。
下手な社長の歌を聴かされて、手をたたくのは苦痛以外の何者でもありません。
私はともかく嘘は言えない、不器用な人間なのです。
そんなことも、私が会社を辞めた理由の一つでもあります。

産業再生機構の責任者だった人たちは今でも立派な講演をしていますが、私は虫けらよりも嫌いです。
ダイエーにしろ、カネボウにしろ、再生どころか解体してしまったのですから。
日本産業解体機構という名前で活動していたのであれば、嫌いにはならなかったでしょう。
繰り返しますが、私は嘘が嫌いなのです、

ところで、この小説ですが、小説としてはあまり面白いとはいえません。
しかし、ドキュメンタリーとしては、実に面白く刺激的です。
それに加えて著者の思いは伝わってきます。
こうした事実はもっと多くの人に知ってほしいと思います。
企業経営というものがどういうものなのかがよくわかるからです。
経営学を学ぶ人は、こうした事例をもっときちんと学ぶべきでしょう。

企業経営に関しては、マスコミで語られていることの大半は「嘘」だと私は思います。
今は株主総会シーズンですが、どれほどの嘘が飛び交っているのでしょうか。
しかし、嘘ではなく、事実を話し出せば、企業という仕組みは素晴らしい仕組みになるはずです。
経済も、社会も、きっと健やかに元気になります。
事実を大事にすること、それこそが「経営」だと思います。
一昨日訪問したコミーという会社は、少なくともその一つです。
そういう会社が、日本の社会を支えているのです。
大企業の役割はもう終わったのです。

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