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2010/07/17

■ふたつの仕事

昨日、紹介したマリア・ミースの論文ですが、もう少し紹介したくなりました。
本を読んでくださいと言っても、読んでくれる人はまずいないでしょうから。

一部文章を省略しての紹介ですが、マリア・ミースはこう書いています。

貨幣ないし資本を生産する労働のために用いられる、生産的労働および生産性という概念は、古典経済学理論の最も言語同断な嘘のひとつである。
その一方で、子どもを産み、養い、世話をし、慈しむ等々の女性の仕事は、直接に貨幣をもたらさないがゆえに、非生産的であるとみなされている。
また、多くの部族や農民のような自らのサブシステンスのためにだけ生産している人々の仕事も同じやり方で評価され、非生産的であると呼ばれている。
そのようなサブシステンス生産を破壊し、自給自足的な諸部族や女性や小農たちのいわゆる「非生産的な」生活維持的サブシステンス労働を変えることが、世界銀行のような資本家の国際機関の明確な目的になっている。
このことは、彼らを仕事と生計の面で貨幣収入と資本に従属させることを意味している。
資本は、膨大な数の人々が自給自足的である時には成長することができないのである。
サブシステンスとは耳慣れない言葉でしょうが、このブログでは何回か使わせてもらっています。
一般的には生命の維持や生存のための活動をさしますが、イリイチやミースは、「人々の営みの根底にあってその社会の基礎をなす物質的・精神的な基盤」という意味を与えています。
つまり、社会を維持しながら人が生きていくための必要不可欠な活動のことです。

サブシステンスという概念を持ち込むと、人の活動(ワーク)には2種類あることがわかります。
サブシステンスのための活動(サブシステンスワーク)と金銭を得るための活動(ペイドワーク)です。
金銭を使うための活動と言うものもありますが、それは金を得るための活動の変種だと捉えていいでしょう。

サブシステンスワークとペイドワークと、みなさんの人生においてはどちらが重要でしょうか。
いうまでもありませんが、前者のはずです。
何しろ前者は生きていくためのワークなのですから。
しかし今の時代においては、ほとんどの人が後者を重視しています。
それこそが「呪縛」なのです。
ミースは、そのことを指摘しているのです。
昨日の時評も、その文脈で受け止めてください。
雇用創出はサブシステンスワークの破壊にもなりかねないのです。
ペイドワークがなくなっても生活は破壊しませんが、サブシステンスワークがなくなれば生きてはいけません。
そんな簡単なことにみんな気づかなくなってきている。
だから「自殺」などと言うことが社会現象になってしまうのです。

また補足しないと誤解されそうな文章を付け加えてしまいました。

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