■節子への挽歌1100:黒ストッキングと黒ネクタイ
節子
昨日、みんなと話していて話題になった話の一つです。
節子がいた頃からよく話題になった話です。
小学校の入学式にジュンは黒いストッキングをはいていったそうです。
ジュンはいやがったそうですが、節子が入学式には黒いストッキングだと断言したのだそうです。
節子は、多くの場合は何でもありなのですが、時にかたくなに自分の考えを曲げないことがありました。
これはその一つです。
自己主張の強い子だったジュンも、節子に押し切られたようで、しぶしぶ黒いストッキングをしていったそうです。
ところが、いざ学校に行ってみると黒いストッキングはジュンだけだったそうです。
ジュンは感受性のとても強い子なので、とても恥ずかしかったといつも笑いながら話します。
節子がいたら、節子が一番大笑いするのですが。
正式な儀式にはそれ相応の服装をしなければいいけない、という、礼を重んじる人と思うかもしれません。
とんでもない。
節子の実家で法事がありました。
私はフォーマルウェアが嫌いでできるだけカジュアルにすごしたいと思っている人間ですが、郷に入らば郷に従えで、節子の実家の法事の服装はすべて節子の指示通りにしていました。
ところが、その法事はみんな気楽に集まるので黒いネクタイなどしないでいいし、ましてや黒いスーツも必要ないと言うのです。
そうかなと少し不安だったのですが、節子の指示に従ってカジュアルな服装で行きました。
ところがです。
法事に集まってくる人たちはみんな黒装束で黒ネクタイなのです。
嘘だろうと、まさに忠臣蔵の浅野匠守の心境になったのですが、この時も節子は当時仕込んだ“so-so”(まあいいじゃないのというような意味だそうです)という言葉を使いながら笑ってしまっていました。
節子の「婿」として恥はかけないと同席していた義兄に頼んで開店を待って自動車で少し離れたお店にネクタイを買いに行きました。
何とか購入することができました。
節子はごめんね、とは言っていましたが、まあ節子にとってはso-soだったのでしょう。
つまり、黒ストッキングも黒ネクタイも、単に節子がいい加減だっただけの話なのです。
でもまあ、そのいい加減さのおかげで、節子は今なお楽しい話題を提供してくれるのです。
それにしても、節子は楽しい人でした。
まあ私にとっては、ですが。
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