■橋下大阪知事処分にみる「弁護士の品位」
光市母子殺害事件の被告弁護団の懲戒請求をテレビ番組で呼びかけたことが問題になっていた橋下大阪府知事に、大阪弁護士会は「弁護士の品位を害する行為」として、2か月の業務停止処分とする方針を決めたそうです。
当時、橋下さんはまだ知事にはなっていませんでしたが、テレビでの呼びかけ方には私自身も違和感がありました。
しかし、私自身はその趣旨には共感していました。
この発言に対して、市民たち(その実態はわかりませんが)から、「刑事弁護の正当性をおとしめる行為だ」として大阪弁護士会に橋下弁護士懲戒処分の請求があったようです。
今朝の朝日新聞によれば、同弁護士会綱紀委員会が「(発言は)弁護団への批判的風潮を助長した」と判断して、この処分が決定されたようです。
この時期に、こうした処分が発表されたことへの不気味さも感じますが(司法界は権力の動きに敏感ですから)、それは偏見だとしても、「弁護団への批判的風潮を助長」という理由には異論があります。
批判は封じてはいけません。
批判の元を正すか、批判への内容的な批判をすべきです。
橋下さんの呼びかけ方の未熟さと目線の高さを別として、もともとはそうした発言を引き起こした大元に対して、弁護士会は何もアクションをとりませんでした。
これに関しては、このブログでも何回か書きましたし、私の友人知人の弁護士にも私は意見を聞きましたが、ほとんどの弁護士は誠実には考えていませんでした。
私の弁護士不信がますます高まった契機の一つでもあります。
弁護士会は、自らが正しいという前提で保身ばかりしています。
保身する人にはおそらく不正義があります。
不正義がなければ保身は不要ですから。
処分に関わった大阪弁護士会の弁護士たちも、批判に耐えられない傷をそれぞれ持っていると思いたくなります。
批判の動きを止めたいと思っているとしたら、それこそが不正義なのです。
批判には正々堂々と立ち向かわなければいけません。
それが、人を裁く権利を与えられた人たちに課せられた責務です。
しかし、人を裁いているうちに、目線が高くなるのでしょう。
テレビで発言した時の橋下さんもそうでした。
かくして司法界には、まともな感覚を持続できる人はほとんどいなくなるのかもしれません。
人を裁く権限は、人をダメにする力をもっているはずです。
だからこそ、司法界は自らを透明にしなければならず、むしろ批判を助長する仕組みを構築すべきなのです。
司法は正義であると教え込まれた国民が、意識を変えなければ、司法改革は進みません。
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