■多様な人たちを統合するための鍵
多様な人たちを統合するための鍵が「利益」だった、とトクヴィルが書いていることを知りました。
「アメリカの民主主義」を書いた、あのトクヴィルです。
最近出版された岩波新書の「トクヴィル 現代へのまなざし」(富永茂樹著)で知ったことです。
移民国家として、多様な人々を束ねて、白紙から国家をつくりあげたアメリカの国民統合の核は「金銭」だったというわけです。
なるほどと思いました。
アメリカとヨーロッパの違いは、そこにあるのかもしれません。
国家が生まれていく時間の長さがまったく違うのです。
アメリカが金融万能の経済を発展させてきたのも頷けます。
金銭の論理は明確です。
多様な意識や欲望を一つの尺度の元に組織化してしまいますから、その組織は単純な論理で動きやすくなり、それゆえに力を強めます。
そして世界を席巻したともいえます。
トルーマンが「開発戦略」を打ち出し、ドラッカーが「顧客創造」を言いだした意味がよくわかります。
しかし、その金銭が、いまや統合どころか分裂を生み出しています。
世界の秩序を壊しかねないところまできています。
しかも、顧客として育てられた生活者たちは、自立するほどの生命力を失っています。
世界は市場となって、地球全体が浪費されだしているといってもいいでしょう。
トクヴィルは19世紀に、そのことを実感していたのかもしれません。
トクヴィルはまた、フランス革命での歴史の断絶を否定しているそうです。
フランス革命以前のフランスは繁栄していて、革命につながるような国民の不満が存在する状態にはなかった、とトクヴィルは書いているそうです。
しかも、絶対君主政のもとで中央集権化が進行し、貴族の特権は失われ、平等が進展していたというのです。
そして、それが故に、革命は起こったというのです。
つまり社会は連続しています。
革命という言葉が、歴史の非連続観(感)を生み出したわけです。
そう考えるとさまざまなことがすんなり理解できます。
中学時代から私が持っていたフランス革命への疑問が、ようやく氷解しました。
書物から得る知識も馬鹿にしてはいけないと、改めて思いました。
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