■中国人による土地購入の広がり
北海道の土地が中国企業に買われ出していることがまた話題になってきました。
この問題は数年前にも話題になった記憶がありますが、その後、報道が途絶え、昨年から今度は水不足問題とつながる形で報道されるようになってきました。
数年後の中国の水不足も話題になりだしました。
生命を維持するために不可欠なのは、土と水と光です。
それらはすべて個人所有の対象ではないはずですが、近代の所有概念はそれらさえ商品化するために所有概念を適用させつつあります。
もちろん日本でも土地の私有化は昔からありましたし、水争いの話があるように、水の所有権もありました。
しかし自然を切り取っての所有には、おのずと限界があります。
私が大学で最初に学んだことは、ローマ法的所有とゲルマン法的総有の発想でした。
あまりまじめな学生ではなかったので、私が大学で学んだのは3つほどしかありません。
リーガルマインド、総有、そして官僚制の3つです。
それだけ、といわれるかもしれませんが、その3つを学んだだけでも私の大学生活は意義がありました。
土地問題は総有に関わっています。
自然への所有権には限界があるという話です。
自然はつながっていますから、そのつながりの中で所有権の行使もおのずと制約を受けるはずです。
自分の土地だからと言って勝手に使えるわけではありませんし、その土地にある水源が土地所有者のものであるわけでもありません。
つまり、つながりのあるものは、本来所有の対象にはならないはずで(せめて区分所有というべきです)、それを便宜的に人工物に対する所有と同じ言葉を使っているだけの話なのです。
企業の経営資源は、人、物、金、情報とよく言われますが、それらは決して勝手に使っていいわけではありません。
すべてはつながっている物の一部だからです。
20数年前から、私はそうした話を話していますが、共感してくれる人はさほど多くはありません。
特に「金銭」に関してはほとんどいません。
しかし金銭は物ではなく、通貨システムという仕組みの一部なのですから、自然と同じように、すべてに影響があるのです。
それがなかなか理解されません。
水源目当てにもし中国資本が日本の土地を購入することができるのであれば、それは法制度に問題があるはずです。
いや、日本の社会のあり方に問題があるのです。
放置しているべきではないでしょう。
ベニスの商人の話を思い出します。
肉を切り取る権利は認めるが、血は対象ではないので、一滴たりとも流してはいけないのです。
私たちも、自らの所有権概念を見直さなければいけません。
すべては基本的にみんなのもの(コモンズ)なのです。
そこから一時的に借りているだけであることを忘れてはいけません。
お金を過剰に蓄財するなどは、もってのほかなのです。
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