■こんな時だからこそ3:テレビCMとサンデルの正義論
ACジャパンの広告に、少なからずの違和感を持っていましたが、その違和感はますます大きくなってきています。
まるで、9.11事件後のアメリカの追体験をしているようです。
ショックソクトリンさえ思い出します。
どうもそう思っているのは私だけでなく、あるメーリングリストでもショックドクトリンへの言及が始まっています。
これに関しては、また日を改めるとして、今日の話題はサンデルの正義論です。
違和感は繰り返し聞かされる次のようなフレーズです。
「日本の強さは団結力」
「日本はひとつのチームなのです」
「日本の力を信じている」
そして
「ひとつになろう にっぽん」
個々のメッセージはさほど異論はないのですが、毎日聞かされ、しかもその背後で、
「日本!」「日本!」
という掛け声まであると、いやな予感を持ってしまいます。
友人の川本兼さんが、先月『日本生まれの「正義論」』という本を書きました。
ホームページでもまだ紹介させていただきましたが、はじめに、で川本さんはこう書いています。
「サンデル氏の正義論が現在の日本の若者にとってあまりふさわしくないと私が考えるのは、氏がコミュニタリアンだからです。たとえ共通善の追究の必要を説いているとはいえ、サンデル氏はやはりコミュニタリアンです。ですから、氏は家族や自分の生まれ育った地域などに対する責務、すなわち連帯(あるいは成員)の責務を強調します。ところが、戦争や平和の問題に関しては、その責務は愛国心と結びつき、そして、その連帯の責務は同意によらない責務なのです。となると、その愛国心と結びついた連帯の責務は徴兵制とも結びつくことに成ります」
「私は、サンデル氏の正義論を通じてわが国における若者が愛国心を強調するようになり、さらに彼らは、いつかはわが国における徴兵制復活までをも主張するようになるかもしれないと感じたのです」
サンデル氏の正義論は、昨年「白熱教室」で話題になった、ハーバード大学の政治哲学者です。
私もテレビはすべて見ましたし、本も読みました。
私もどちらかといえばコミュニタリアンなので、共感するところは多いのですが、川本さんと同じ危惧を感じていました。
特にサンデル教授が東大で行った白熱教室の模様をテレビで見た時には、あまりのステレオタイプな議論に驚きました。
みんな予習していたような気がします。
しかし、なんと見事に符牒が合うのでしょうか。
サンデルの「正義論」ブームに続いての、「日本はひとつ」ブーム。
こんな時期に、こんなことを言うと不謹慎のそしりを受けかねませんが、
こんな時だからこそ、この違和感を多くの人に伝えたいです。
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