■危機を乗り越えるためには効力感が大切
危機を乗り越えるためには、効力感(エフィカシー)が大切だと言われます。
効力感とは、「あることを達成するために自分が首尾よく行動できるという予期に関する正の心理的感覚」です。
「ある状況下において必要な行動を効果的に遂行できると個人が前向きに認知した状況」にあるとき、効力感がある、と言えます。
効力感の有無は、動機に影響を与えるだけでなく、その成否を左右するとも言われています。
また、問題解決に当たる人が、効力感を持っているかどうかを、周りの人がどう受け止めているかも、その結果に大きな影響を与えるだろうと思います。
効力感は、主観的なものであると同時に、周辺との関係性と深く関わっているからです。
いわゆる相互主観的なものだといえるでしょう。
効力感は個人だけではなく、集団にも存在します。
そして、その集団的効力感はメンバーの効力感の総和ではなく、それぞれの効力感の相互作用の結果として生まれてくるといわれます。
集団的効力感が強い組織のほうが、目的の達成率が高いことは言うまでもありません。
集団的効力感への周辺の期待が、大きな意味をもつことも、個人の場合と同じです。
こうした危機管理の研究として、オウムサリン事件の時の聖路加国際病院や、阪神淡路大震災震の時の住友電工のケーススタディを踏まえた高田朝子さんの「危機対応のエフィカシー・マネジメント」(慶應義塾大学出版会)はとても示唆的です。
福島原発事故への政府の対応は、高田さんが示唆していることの正反対の動きにさえ感じます。
私が一番残念なのは、記者会見の際の人たちに効力感を感じないことです。
さらに悪いことに、当事者感さえ持てません。
菅首相に関しては、もはや論外ですが、こうした時にトップを変える勇気も必要なのだろうということにも気づかせてもらいました。
しかし、その一方で、さまざまな各地では効力感を持った人たちが活動をしているのでしょう。
そこでの効力感が、次の世代を変えていくかもしれません。
そうした新しい動きを、テレビがもっと伝えてくれれば、社会そのものが元気になって行くかもしれません。
改めて、「危機対応のエフィカシー・マネジメント」を読み直しました。
世間に出回っている退屈なリスクマネジメントとは違って、わくわくします。
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