■原子力発電の捉え方
「ほとんど起こりえない」と専門家が保証していたこと以上のことが、すでに現実に起きてしまったのだから、私たちは、「いつでも起こりえる」という前提に立って、あらためて私たちの生活を考え直す方がよさそうである。」私よりも2歳年下の室田武さんの言葉です。 おそらくこの言葉に反対する人はいないでしょう。 こういう発言をする人も少なくないでしょう。
しかし、室田さんが書いたのは、1979年。今から30年以上前です。
その年に出版された「エネルギーとエントロピーの経済学」という本の序章に出てくる本です、
ここで、「ほとんど起こりえない」と言われているのは、スリーマイル島の事故のことです。
今回の福島原発事故のことではありません。
その本の副題は「石油文明からの飛躍」です。
室田さんが脱石油文明の先に見ていたのは、原子力ではありません。
最近流行でみんなが語りだした自然エネルギーです。
2年後の1981年に、室田さんは「原子力の経済学」を出版しています。
その本がもう少しきちんと読まれていたら、時代の流れは変わっていたでしょうか。
残念ながら、変わっていなかったでしょう。
時代が変わるためには、そこに生きる人一人ひとりの生き方が変わらなければいけません。
産業界も政治家も、そしてなによりもマスコミが、室田さんのメッセージを真面目に受け止めませんでした。
もちろん私たち生活者も、です。
その言葉に出会った時から、私は少しずつ生き方を変えてきました。
室田さんの「原子力の経済学」には、原発がいかに経済的にも高くつくのかがわかりやすく書かれています。
自分の目で確かめたくて、東海村の原発も見せてもらいました。
ちょっと時間はかかりましたが、10年後には会社も辞めました。
その間、取り組んだのは、自分の勤めていた会社の企業文化変革でした。
それには見事に失敗しました。
私にできるのは、まずは自らの生き方を変えることだと気づいたのです。
東京電力や電気事業連合会を責めるのは簡単です。
反原発デモも大切です。
しかし、私たちの生き方も変えないと、結局はまた、元の木阿弥になるでしょう。
最近の流れを見ていると、何も変わらないのではないかという気がしてなりません。
この人はと思っていた人までもが、本気で原発に対峙していないことに失望することも少なくありません。
しかし、失望していても、何も始まりません。
私自身の生き方を、もう一歩進めようと思います。
先があまりないのが。少し残念ではありますが。
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