■死刑制度と「赦し」
4月29日に、私のオフィスに1冊の本が投函されていました。
ブログの読者からの投函でした。
CWSコモンズの記事(「読者から届いた1冊の本」)を読んでもらえればと思いますが、私のブログの光市母子殺害事件に関する安田弁護士への私の批判には同意できないというというのが、本に挟まっていたメッセージでした。
手紙に書かれていたメールアドレスに連絡しましたが、アドレスが違って書かれていたようで、いろいろとトライしましたが、届きませんでした。
この話はブログにも書きました。
本は読ませてもらいました。
内容は基本的に共感できるものでした。
私も検事を目指した時期もあるほどですから、冤罪への怒りは大きいです。
きっかけは、中学のころ観た映画「八海事件」でした。
それ以来、権力への不信感が始まり、私の人生は大きく方向づけられたような気がします。
死刑制度には私も反対ですし、昨今の裁判制度にも違和感どころか拒否感があります。
ですから死刑制度反対に取り組む安田弁護士たちの活動には共感できます。
しかしだからこそ、光市母子殺害事件に関連しての安田弁護士の発言には大きな違和感があります。
それは今も変わっていません。
今日、時間があったので、思い出して、安田弁護士の講演録をネットで探して読ませてもらいました。
元プロボクサー袴田巌さんを救う会「キラキラ星通信」第61号に掲載されている記事です。
「日本の裁判はどこまで信用できるか」と題して、安田弁護士が講演しています。
とてもわかりやすく、とても共感できます。
講演時期は2006年の11月です。
私が安田批判をした前年です。
もしこの時に、この記事を読んでいたら、たぶん私の批判のトーンは変わっていたでしょう。
私が安田さんのメッセージに心引かれたのは、講演の最後の「赦しについての話」です。
ある事件で殺害された若者の父親は、加害者の謝罪の言葉に絶対に耳を貸しませんでした。
ところが9年目にして、加害者を赦すのです。
そして、父親は加害者に「頑張れよ」という手紙を出すのです。
その話を紹介した後に、安田弁護士はこう話しています。
彼を死刑にした場合に、この十年後の赦しはあっただろうか。お父さんは、もし彼の謝罪がなかったら、今のような気持ちになれただろうか。憎しみが残ってたかもしれない。僕は死刑は絶対なくさなければならないと思ってるんです。それは人道に反するだけじゃなくて、死刑によっては絶対にものを生まない。人間の信頼は回復しない。僕はそれを見て、人間はこんなにすごいものなのか、人間はこれほど信頼できるものなのか。中途半端な引用なので、ぜひ本文を読んでください。
長いですから、最後の「赦しについて」のところだけでもいいです。
安田さんへのイメージが変わりました。
もちろんブログに書いたことを撤回するつもりはありませんが、いささか短絡的だったかもしれないと、そんな気持ちになっています。
本を届けてくれた人に会いたくなりました。
もしこの記事を読んでくださったら、メールをいただけないでしょうか。
湯島に来てもらってもいいです。
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