■節子への挽歌1409:「萌える季節」
節子
相変わらず厳しい暑さです。
美野里町の文化センター「みの~れ」の山口館長とスタッフの人たちが湯島に来ました。
来年が開館10年目なのだそうです。
まだ10年しか経っていないのかと思うほど、私には昔のプロジェクトですが、このプロジェクトは思い出の多いプロジェクトです。
住民が中心になって、自分たちの文化センターを見事につくったのです。
そのプロセスを記録に残したくて、住民たちに声をかけて本を出版しましたが、また同じようなスタイルで本を出版したいというのです。
「みの~れ」の杮落としも、住民たちが作ったミュージカル劇団が演じました。
節子と一緒に観にいきました。
「みの~れ」には、さまざまな思い出もあります。
話を終えて帰る間際に、山口さんは壁のリトグラフ(藤田さんの「萌える季節」)を見て、これは誰のですか、と訊きました。
ついつい妻が好きだったのですと応えてしまいました。
節子の葬儀には美野里町から大勢の人が来てくれました。
山口さんは節子とは会ったことがありませんが、お心遣いいただきました。
もう4年くらい経ちますね、と山口さんが言いました。
その一言で、また美野里町に行く気になりました。
4年前のことを覚えていてくれたのです。
そして、佐藤さんが元気になってよかったと言ってくれました。
節子は幸せ者だと、時々思います。
会ったことのない人にまで覚えていてもらえるのです。
そして、私もまた、幸せ者だと思います。
壁にかけてある「萌える季節」はとてもいい版画ですが、これまで作者を質問されたのは2回目です。
山口さんは、なぜ質問したのでしょうか。
山口さんたちが帰った後、久しぶりに「萌える季節」を眺めました。
たしかに、林の向こうに何かがいそうな版画です。
見つづけていると奥に通ずる道が見えてきます。
そこに入り込んで行くと、節子がいそうな気配がします。
節子は、この版画をデパートで見て、すぐに買ってきました。
よほど気に入ったのでしょう。
もしかしたら、いまはこの林の奥にいて、毎日、私を見ているのかもしれません。
そんな気さえしてきました。
暑さのせいでしょうか。
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