■切り餅特許訴訟とプロ・パテント戦略
切り餅特許訴訟事件の控訴審は一審の判決を逆転させました。
この裁判は、ご存知の方も多いと思いますが、佐藤食品の「サトウの切り餅」などの側面と上下の面の切り込みが、側面に切り込みを入れた越後製菓の切り餅の特許技術の範囲内かどうかが争われている訴訟です。
昨年11月の第一審の東京地裁は特許の侵害を認めませんでした。
ところが、意外にも逆転判決です。
今日の夕方のテレビのニュースでもアナウンサーが「意外にも」という形容詞で報道していました。
これまでも何回か書きましたが、私は知的所有権には消極的な考えを持っています。
折角の発明であれば、できるだけ広く使えるようにしたほうがいいという考えです。
どんなに斬新に見える考えも、似たようなことを考えている人が必ずいるものです。
DNAの二重らせん構造でさえ、同時に2人の人が気づいたといわれています。
切り餅の切れ目など、同じような事は多くの人が考えていたはずです。
それがちょっとだけ早く特許申請しただけで、ほかの人が自由に使えなくなるということに、私は違和感があります。
私が知的所有権に消極的なのは、そこに「知の独占」の発想を感ずるからです。
プロ・パテント(特許権の保護強化)戦略は、最近のアメリカの国策と言われています。
新自由主義に踏み出した、レーガン時代からの動きです。
それを加速させたのは、日本企業への対抗とも言われていますが、いまや日本は、そのプロ・パテント世界に飲み込まれてしまっています。
アメリカの強い働きかけがあったからです。
しかし、私にはどうしてもなじめません。
「知の独占」は「知の暴力化」につながるからです。
特許の利用ができないために、最貧国で子どもたちの治療ができないなどという事態は、その一つの現れです。
よく中国の特許権やアイデア模倣が話題になりますが、私はあれだっていいじゃないかと思っています。
この話もまた、最近話題のTPPとつながっています。
自由化を進めても、一方では「知の独占」でアメリカは自らを守れるのです。
知は、すべての人たちのものでなくてはいけません。
青色LEDの訴訟も、私には全くなじめませんでした。
知は、一人の人が発明するのではありません。
長い歴史の積み重ねのうえに、そして広い生活の広がりのうえに、知は生まれてきます。
たまたまある人の頭の中に顕在化したとしても、それはすべての生命の集合無意識と無縁ではありません。
最近、あまりお餅は食べないのですが、サトウの切り餅をがんばって食べることにしました。
越後製菓には訴訟を取り下げてほしいと思っています。
明日はわが身かもしれませんよ。
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コメント
◆意見よみましたよ、で小生の意見ね。
・越後製菓にメールしたものね。
◆タイトル 今般の切り餅切り込みの件は共用特許にするのね。
内容 ◆お互いに相手の特許を生かしきるのね。 ・ドンドン技術も時代も駆け足ね、止まったら駄目なの、置いてけ堀ね。 ・相互共用に差が在るなら、少々調整ね。 ・個別に於いても、返答しません、放っとくのね。 H.23.9.7 pm5:03 ありがとうございます。
・以上です H.23.9.8 am2:16 ありがとうございます。
投稿: 天童 光雄 | 2011/09/08 02:16