■ニューヨークの若者のデモに思うこと
ニューヨークのウォール街から始まった、経済格差や高い失業率に異議を唱える若者たちのデモはさらに広がっているようです。
「富裕層に課税を! 貧困層に食べ物を!」というスローガンは、アメリカに限ったことではありません。
日本も、若者にとって働く場が見つけにくい社会になっていますが、アメリカも、たぶんEUも事態は同じでしょう。
ITの発展は、人の仕事を大きく減らしているからです。
景気が回復しても、雇用は回復しないのが、昨今の経済状況です。
ジョブレスリカバリーという言葉がありますが、好景気と雇用量とはいまや切り離されているのです。
それに気づかずに、「雇用を増やそう」などと騒いでも、何の意味もありません。
発想を変えなければいけません。
最近の就労支援予算が、どれほど馬鹿げた使われ方をしているかはご存知の方も多いでしょうが、本当に働きたい人のためにはなっていないことも少なくありません。
アメリカのデモのスローガンは私には間違っているように思います。
「富裕層に課税を! 貧困層には仕事を!」でなければいけません。
人は「パン」のみでは生きられないからです。
しかし、仕事は「与えられるもの」ではありません。
仕事を雇用と考えたり、お金を得るものと考えたりしていては、なかなか解決策は見えてきません。
そうした発想の呪縛から解き放たれれば、世界は全く変わってきます。
自由に生きていた人たちを雇われ人に変えたことで、近代産業は発展しました。
見事なほどにみんな飼いならされてしまい、仕事といえば、賃労働、雇用労働ということが常識になってしまいました。
しかも、女性の社会進出というきれいな言葉で、女性さえも賃労働者になってしまいました。
賃労働者はほぼ必ず、「金銭消費者」になっていきます。
その循環から抜け出たのが「富裕層」です。
富裕層の「仕事」概念と賃労働者のそれとは全く違うはずです。
人は弱いもので、最近の富裕層はちょっとばかし欲張りすぎてきました。
フランス王朝貴族やロシア王朝貴族ほどではないかもしれませんが、私には状況は似て見えてきます。
リビアのカダフィもそうでしたが、人はみんな弱いものです。
アメリカのデモの広がりはどうなるのか。
そのスローガンから、1960年代のデモとは全く違うように思います。
たぶんさほどの広がりは怒らずに、終息するでしょう。
ネグリのいうマルチチュードが前向きに動き出すには、もう少し時間がかかりそうです。
1960年代がなつかしいです。
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