■BOPビジネスの両義性
昨日、ナラティブサロンを開催しました。
自分の物語を一人称で語るとういう「ナラティブ・アプローチ」を基本にしたサロンですが、今回は本村拓人さん(--株式会社Granma代表)に話題提供をお願いしました。
本村さんはほとんどをアジア諸国を歩いている人なので、日本にはあまりいませんが、この数日だけが在日だったのです。
本村さんは昨年話題になった「世界を変えるデザイン展」を企画主催した人です。
その生き方に私は共感しています。
ともかく「行動」であり、しかも「誠実」です。
テーマは「グラスルーツ・イノベーションと途上国支援」です。
話は本村さんが取り組んでいる、BOPビジネスから始まりました。
BOPとは、Base of the Pyramidの略で、所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指す言葉です。
いわゆる「貧困層」です。
そこには絶対的な貧困層と相対的な貧困層がありますが、BOPビジネスには彼らを市場化する意味合いと彼らの自立支援の意味合いがあります。
昨日も問題提起させてもらいましたが、注意しないとBOPビジネスは俗に言う「貧困ビジネス」になってしまいます。
そうなれば、それは貧困層を救うのではなく、貧困層を増やす結果につながりかねません。
最近、ソーシャルビジネスとか福祉ビジネスなどと言われる動きが広がっていますが、ここにも全く同じ問題があります。
私もさまざまなNPOと接点がありますが、とても共感していたNPOが久しぶりに付き合ってみたら、貧困ビジネスの世界に陥っているというようなこともあります。
福祉の世界は昔からお金まみれの世界でもありますが、注意しないと初志とは違う活動になってしまう危険性があるのです。
本村さんのビジョンは、もちろん反貧困ビジネス発想です。
彼の話しぶりからそれが良く伝わってきます。
しかしだからといって気を許すわけには行きません。
純粋な、彼の活動には感服しますし、その構想や方針も共感できるものが多いです。
だからこそ、実は一抹の不安を感じもします。
世界の市場化に、結果的には加担することになりかねないからです。
日本政府の取り組み方は、間違いなくその方向を向いています。
本村さんの貧困の定義は「想像力が枯渇している状態」です。
お金ではありません。
とても共感できる定義です。
「世界のどこかで誰かが被っている不正を、心から悲しむことができる人間になりなさい。それこそが最も革命的な資質なのだから」という、チェ・ゲバラの有名な言葉が、どうも本村さんの信条になっているようです。
それを真情にしている限り、本村さんのBOPビジネスへの取り組みは、お金まみれにはならないでしょうが、それにはかなりの覚悟が必要です。
昨年、本村さんたちが主催した「世界を変えるデザイン展」の話もしてくれました。
これはそのサイトもありますので、ぜひ見てください。
近代技術ではない等身大の技術への関心は一時期高まりましたが、最近はあまり言われなくなっていたように思いますが、そうした活動は着々と進んでいるようです。
これに関しては、Techpedia というサイトがありますのでご覧ください。
この活動は、経済パラダイムの岐路を垣間見させてくれるように思います。
長くなってしまったのですが、BOPビジネスの両義性と言う問題を私たちはもっとしっかりと考えなければいけないように思います。
30の若者から、昨日は大きな刺激を受けました。
そして、世界を構想するのは老人にもできますが、やはり世界を創っていくのは若者だということを、改めて痛感したナラティブサロンでした。
ナラティブサロンは今回をもって終わります。
ナラティブの捉え方があまりにもバラバラなので、議論が進化しないような気がしてきたからです。
半年後に、ナラティブカフェを開始する予定です。
本村さんのような若者が中心になるようなカフェができればと思っています。
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