■「泥棒は物がうまく盗めれば成功だ」
昨日、ある集まりで、ある人が「泥棒は物がうまく盗めれば成功だ」と言うような話をしました。
盗まれたほうは被害をこうむるわけですが、盗んだほうは喜べるわけです。
その話を聴きながら、果たして自分はどちらにいるのだろうかと、思ってしまいました。
同じ集まりで、その前にTPPの話が出ました。
農協はTPPに反対しているが、共済事業関係者はあまり反対の動きをしていないのは問題だとある人が言ったのです。
その集まりには共済事業関係者が多く、しかもみんなTPP反対の立場から行動をしなければいけないと思っている人たちでした。
私も、みんなと同じ立場なのですが、ついつい余計な発言をしてしまいました。
農協がTPPに反対するのは自らの立場が弱くなりかねないからではないか。
農業関係者にはTPP賛成の人も多い。
これまで農協や農水省が牛耳ってきた農業をTPPという外圧が壊してくれるという期待もある。
これではまるで私はTPP賛成論者みたいだなと我ながら思ってしまいました。
もちろん問題はそんなレベルの話ではないと私はおもっています。
TPPは経済の話ではなく文化の話だと考えているのです。
「泥棒は物がうまく盗めれば成功だ」という話は、この話題とは全く別に出されたのですが、私には奇妙につながって感じられました。
立場が違えば、評価は全く違ってきます。
ですから、どちらが絶対に正しいなどと言うことはありません。
そこが人間社会の悩ましさです。
他者の物を盗む泥棒は悪いとしても、他者の物が、その他者が盗んだものだとしたらどうでしょうか。
たとえば、いま私たちが浪費している自然環境は、誰のものでしょうか。
海外から輸入されてくる生活物資は誰かのものを盗んではいないのか。
もちろんお金を払っているとしても、本当に正当の対価を払っているのでしょうか。
もし正当な対価を払っているとしたら、貧富の差など生まれないのではないか。
そもそも私が住んでいる土地はどうして私のものなのか。
土地が誰かのものになった最初の理由は何でしょうか。
やはり最初は「泥棒的な行為」から始まっているような気がします。
だとしたら、今の泥棒は、ただ単に時代を間違えただけではないか。
とまあ、こう考えていくと、なんだか自分が泥棒のような気がしてきました。
消費税と泥棒とどこが違うのか。
これも悩ましい問題です。
いま改めて、カール・ポランニーの『経済の文明史』を読み直しています。
経済って一体何なのか、ますますわからなくなってきています。
困ったものです。
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コメント
佐藤様、初コメント致します。難しい話は出来ない私ですので、お許し下さい。昔、TVドキュメンタリー番組で、西アフリカの何処かの国、良質なカカオ産地の収穫現状を伝えていました。見て衝撃を受けた事を思い出しました。貧しくて学校に満足に通えない児童達がカカオの収穫労働者として沢山働いている現実。怪我や危険と隣り合わせの毎日なのに、とても安い労働賃金。収穫したカカオがどう利用され、どんな商品になるのかさえ全く知らない彼ら達。加工されて美味しいチョコレートになるよと、チョコをプレゼントされて、初めて見たと不思議そうに見つめ驚く。一口食べた瞬間に美味しい!と満面の笑顔になる彼ら。胸が締め付けられました。
こういう現実を考えると、お金を払って商品を買う、当たり前感覚以前に、原材料生産地には過酷な現実もあると知っておくのは大切だなと思いました。
正当な対価。。カカオ産地で働く彼らに満足な賃金が得られ、学校で学べるようになればと願うばかりです。ピントずれたコメントで失礼しました。
投稿: スマイル | 2012/01/25 01:00
スマイルさん
ありがとうございます。
ピントはずれどころか。まさにそのことを私も思って書きました。
フェアトレードと言う言葉は広がっていますし、状況は改善されてきているところもあるようですが、基本的な構造はあまり変わっていないどころか、格差の進行はむしろ深まっているような気もします。
スマイルさんのご指摘に同感です。
ありがとうございました。
投稿: 佐藤修 | 2012/01/25 07:30