■障害者自立支援法改正案と分断の政治
昨日の閣議で、難病患者を福祉サービスの対象にすることなどを柱とする障害者自立支援法改正案が決定されました。
障害者自立支援法は成立当時から問題が指摘されていましたが、障害者による違憲訴訟を受けて、一時は長妻厚労相(当時)が廃止を約束したこともありますが、結局は弥縫策で決着された感じです。
最近の立法界には、理念がなく、制度論で終始していることの一つです。
そして、肝心の当事者たちの声の多くは聞き入れられません。
制度がいくらできても、それで問題が解決されるわけではありません。
昨今のいたましい「餓死事件」は、もし制度がうまく機能していれば、防げたものも少なくありませんが、制度を生かすのは「人のつながり」です。
そして、注意しないと制度は「人のつながり」をこわします。
介護保険はそうした制度の一つかもしれません。
制度化の恐さは、人を分断することです。
今回の障害者自立支援法の見直しに関連して、制度の谷間のない障害者福祉の実現を求める実行委員会の共同代表の山本創さんたちは、厚生労働大臣宛に、「病気別で分断する過去を改め、障害手帳のないその他慢性疾患をもつ人も医師の意見書で補い、「制度の谷間」をなくすことを法律上、明確にしてください」と訴えましたが、今回の見直しではその声は届かなかったようです。
山本さんたちの要望書で私が印象的だったのは、「病気別で分断」するというところです。
今の政治はまさに「分断の政治」です。
お上の政治の要は「分断」です。
しかし住みやすさを目指す政治は「包括」でなければいけません。
そこに政治の本質が見えてきます。
テレビでも報道されていますが、難病に苦しむ人は少なくありません。
しかし、その難病に「名前」がつけられるかどうか、さらにどういう「名前」がつけられるかで、支援の対象になったりならなかったりします。
患者と接する医師の判断よりも、現場をしらない厚生官僚やお抱えの医師たちが支援対象に入れるかどうかを決めるのです。
おかしな話ですが、これは水俣病の時の構造から何も変わっていないということです。
現実は複雑で、難病も人それぞれです。
名前や中途半端な医学的見地からの知識などで、難病を分断する仕組みは、どう考えてもおかしいですが、残念ながら私たち自身も「分断の思考」から抜けられずにいます。
障害者自立支援法改正案には、いまという社会の本質が示唆されているような気がしてなりません。
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