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2012/04/24

■節子への挽歌1695:「とても寒い」

節子
ハプスブルグ家の最後の皇帝フランツ・ヨーゼフの悲劇的な人生は、有名な話です。
おそらく彼は誠実な人物だったと思いますが、それゆえにか、あまりに哀しい人生でした。
意見の違いから愛する弟はメキシコの皇帝になって革命軍に殺され、たった一人の息子は自殺をしました。
しかし一番哀しいのは、毎日、手紙を書いていたという妻エリザベーテとの物語です。

エリザベーテとの結婚は、母の反対を押し切ってのものでした。
ヨーゼフとエリザベーテは深く愛し合っていました。
しかし母との確執のなかで、エリザベーテは旅行に明け暮れ、執務に追われるヨーゼフとの一緒の時間はあまりありませんでした。
ヨーゼフにとっては、毎日、旅先にいるエリザベーテに手紙を書く時間だけが、おそらく至福の時間だったのでしょう。
ヨーゼフは、毎日のように手紙を書いていたそうです。
その手紙が残っていますが、その文面には権力者とはまったく別の顔が見えます。

たとえば、こんな手紙があります。

私の愛する人
いま起きたばかりの短い時間に、この手紙を書く時間をつくることにした。
あなたに愛していると言いたいから。
あなたの顔が見たい。
身体に気をつけるという約束を忘れないで、たくさん遊んでおいで。
悲しい思いにならないように、いい旅ができるように。
こんな手紙もあります。
いとしいあなたへ
さびしくここに座っている。
シェーンブルンにいるあなたのことを考えている。
とても寒い。
暖房がついていても寒い。
「とても寒い」
心身に突き刺さるような気がします。

今日も寒い一日です。

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