■ハーメルンの笛吹き男に従う子供の群
書庫である資料を探していたら「四番目の恐怖」という広瀬隆と広河龍一の共著の本を見つけました。
1988年に講談社から出版された本です。
ぱらぱらと見てみたら、あまりに昨年の福島原発につながる記述が多いので驚きました。
発電コストに関しても、1987年に通産省資源エネルギー庁によるコスト計算が紹介されていますが、この時の数字では原子力の発電コストはキロワット時あたりで12円、石油火力で10円となっています。
当時も原発のほうのコストが高いことがきちんと出ていたわけです。
それに電力需給のトリックもとてもわかりやすく書かれています。
あとがきに、こう書かれています。
原子力が危険すぎる事実を、すでに国民の誰もが知ってしまった。それでも一部の原子力関係者が強行論を吐き、1億2千万人を弾劾から突き落とそうとしている、私たちは、ハーメルンの笛吹き男に従う子供の群ではないのだ。
なんら当時と代わっていないことに唖然としました。
つまり20年以上前に、いまと同じ状況があったのです。
私もそれを忘れてしまっていました。
広瀬さんの思いとは違って、私たちはハーメルンの笛吹き男に従う子供の群だったわけです。
ちなみに、四番目の恐怖とは。青森県六ヶ所村の再処理工場の話です。
それまでの3つは、スリーマイル島、チェルノブイリ、そしてイギリスのウィンズケールのことです。
昨年の福島原発事故の後、1970年代から80年代にかけて書かれた原発関連の本を何冊か読み直しましたが、そうした本の中にすでに福島原発事故への不安や電力需給の話はかなり明確に書かれていることに驚かされます。
私は、そうした本を読んでいて、それなりに原発への評価は明確にしていたのですが、なんら行動を起こしませんでしたし、そのうちにそうした危機感さえも風化させていたわけです。
まさにハーメルンの笛吹き男に魂を抜かれていたわけです。
恥じなければいけません。
また20年後には、同じような状況になっているのでしょうか。
すでに、原発への不安感はかなり風化し始めています。
それにしても笛吹き男の笛の音は、実に快いのです。
こうしてみんなまたせっせと電力消費者に戻っていくのでしょうね。
心しなければいけません。
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