■君が代と日の丸はトロイの木馬
少し書くのが遅れましたが、先日、「大阪維新の会」の市議団が議員提案を予定していた「家庭教育支援条例案」は、反対が多かったので提案を見送ったという報道がありました。
この条例案は、たとえば、「児童虐待や子どもの非行などを発達障害と関連付け、親の愛情不足が原因」とするなど、私が読んでも首を傾げたくなる内容でした。
提案見送りでよかったですが、大阪維新の会や橋下市長の教育観は、私にはとんでもないもののように思えます。
たとえば、橋下時代になってからの君が代不起立の教師の処分の激しさは、常軌を失しているように思います。
先日、元教師の方が湯島に来ました。
20年以上前に教師から労働組合に転じた方です。
まったく別の話でやってきたのですが、少しだけ教育の話になりました。
その人が教師だった頃は、まだ教師が一目置かれていた時代でしたが、いまはその逆です。
教師も、親も、それぞれに権威が残っていた時代は、問題もいろいろとあったと思いますが、子どもたちは「あったかく」守られていたように思います。
今の学校はまったくそうではありません。
朝日新聞の記者を経て、ドキュメンタリーライターになった田中仲尚さんの「ルポ 良心と義務」(岩波新書)は、「日の丸・君が代」問題でいかに学校が荒廃してきているかを描き出しています。
田中さんは、これまでにも教育や憲法に関して、とても誠実なドキュメンタリーを書いていて、私はほとんど読ませてもらっていますが、いつも身震いしてしまいます。
大人たちが「資本のための経済活動」に取り込まれているうちに、その子どもたちが大切な時間を過ごす小中学校がとんでもなくすさんだ場所になっていることに多くの親は気づいていないのでしょうが、これは実に恐ろしいことです。
もし子どもたちのことを考えるのであれば、ぜひ読んでいただきたい本です。
新聞やテレビなどのモンタージュされた報道に触れるだけでは、事の実相はまったく見えてはきません。
原発もそうやって隠されてきたわけですが、実はその気になれば、見えたはずなのです。
それと同じことが、いま学校でも進んでいるのです。
シリアなどの紛争地では、子どもたちはどう育っているのだろうかと時々思います。
シリアでは今日も大きな爆発事件が報道されていますが、それを見ていて、なぜか日本の学校の風景が頭に浮かんできました。
今の日本の小中学校は、最近のシリアとどこか本質的にはつながっているのではないか。
大人たちがののしりあい争い合っている状況で育つ子どもたちは、どんな社会を作り出すのでしょうか。
君が代と日の丸は、トロイの木馬なのかもしれません。
「愛国心」もそうですね。
自信のない権力者にとっては、人が育たなければ権力保持は安泰です。
愚民政策がどんどんと深まっているような気がします。
それに司法とマスコミが加担している。そんな気がしてなりません。
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コメント
家庭教育支援条例案を提案したのは、西成区選出の辻淳子さん(3期)です。
彼女は、3人の娘さんの母親です。
発達障害は、先天性ですので、親のしつけや愛情不足ではありません。
母親が、子供を健常に産まなかったことが原因なのです。
どちらにしろ、一番かわいそうなのは、母親に健常に産んでもらえなかったお子さんでしょうね。
投稿: 大阪市民 | 2012/05/11 23:43
>橋下市長の登庁時の囲み取材で、国歌斉唱を命じる市教委の職務命令の経緯について事実関係を誤った記者に対し「勉強不足で取材不足。事実も何も知らない。何も分かっていない」と批判した。
市長には、失礼にならないように、質問すべきである。
> さらに、民間出身で橋下市長と旧知だった大阪府立和泉高(岸和田市)の中原徹校長が、国歌斉唱の際、教職員の口元の動きをチェックして斉唱を確認したことについて記者が問うと、「報道が誤った情報を伝えるから中原校長が社会的に大変な状況になっている。とんちんかんな記者がいろんなことを報道するから」と声を荒らげ、「(記者の会社に)社歌はあるのか。(社歌がないから)こんな記者になっちゃう」と憤りを隠せない様子で、20分以上問答を繰り返した。
自分の立場を明らかにしてからでないと、議論にはならない。
対等に議論する資格のない記者は、恭しく市長の意見を拝聴すべきである。
http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/
投稿: noga | 2012/05/13 06:38
日の丸君が代騒動の件は、公務員が現代日本の君の地位に君臨していると解釈している僕にとっては
起立不起立どっちに転んでも不快極まりないです。というか他に取り上げるべき事が山ほどあるだろうと。
なんだか遠い異国のAKB総選挙を見ているようです。
どうでもいい事が目立って、しかもマイナーの末端が槍玉にあげられます。
この騒動が橋下市長の保守アピールのパフォーマンスの1つだったとしたら、少し残念です。
パフォーマンスとしては腑に落ちない物でした。支持層拡大に繋がったかと言われると、かなり微妙です。
こんな様で国家権力と渡り合えるのかどうか。
この騒動が橋下市長の信念に基づく政策の1つだったとしたら、もっと残念です。
出世した時代を間違えているか、世間の見聞を欠いていると言わざるを得ません。
投稿: 2933 | 2012/05/14 01:20