■節子への挽歌1784:虚勢の効用
節子
久しぶりに武田さんのところに行ってきました。
武田さんの弟さんには、節子は会ったことがないと思いますが、2か月ほど前に、奥さんが急逝されたのです。
武田さんから、そのことを聞いたので、ともかく武田兄弟に会いたくなったのです。
いや、会わないといけないような気がしました。
奥さんを亡くした友人がいたら、会うだけでもささやかな支えにはなるだろうと思ったのです。
仕事が終わる頃を見計らって、お伺いしました。
お2人の仕事場を訪ねるのも本当に久しぶりです。
お話をお聞きしたら、まさに急逝だったようです。
朝、起きたら、奥さんが部屋の隅でうずくまっていたので、声をかけたら亡くなっていたのだそうです。
癌だったようですが、あまり詳しくは訊けませんでした。
どう話したらいいか、やはりわからない。
第一、話すことがいいのかどうかさえわからない。
自分の時はどうだったかと思い出すと、如何なる言葉も受け付けられませんでしたし。
まさに「思ってもいない突然の別れ」です。
どんなに「悔い」が残ったことでしょう。
いや、それ以前に、亡くなったという事実そのものが、受け容れがたかったことでしょう。
たぶん今もなお、理解できずにいるような気がします。
これからが大変だろうと、他人事ながら思います。
仕事があるので気が紛れるが、仕事がなかったらおかしくなったかもしれないと話されましたが、それがよくわかります。
仕事は、いまも忙しそうです。
それが支えになっているのかもしれません。
しかし、いつもなら感ずるだろう彼からのオーラは伝わってきませんでした。
人の心身の状況は、言葉とは別にきちんと伝わってくるものです。
生活の一部を構成していた伴侶がいなくなると、人は戸惑います。
その戸惑いを受け容れたくなくて、人は虚勢さえはることもある。
それは無意識なのですが、そのおかげで、みんなは「大丈夫だ」と思います。
しかし、本当は大丈夫ではないのですが、不思議なもので、周りがみんな大丈夫だと思うとなんだか自分も大丈夫なような気になっていく、
考えてみると、私も素直に自分をさらけ出していたと言いながら、その実、結構虚勢も張っていたことに思い当ります。
いえ、今もまだ、もしかしたら虚勢を張っているのかもしれません。
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