■「よき市民であるためには、悪しき《市民政府》に抵抗せよ」
昨今の政府の動きには強い怒りを感じます。
にもかかわらずなにもしない自分に、さらに怒りを感じます。
思い出して、ソローの「市民的不服従」を読み直しました。
1849年に発表された時のタイトルは「市民政府への抵抗」(Resistance to Civil Government)だったそうですが、そのほうがソローの真意は伝わってきます。
「市民政府」と言う言葉が、マジックワードなのです。
今回は、最近、新訳された「ソローの市民的不服従」を読んだのですが、訳者の佐藤雅彦さんがあとがきでこう書いています。
ソローが160年前に、帝国主義戦争にのめり込み建国の大義を忘れつつあったアメリカ合衆国で発した「市民的不服従」のメッセージ、「よき市民であるためには、悪しき《市民政府》に抵抗せよ」という呼びかけは、いま現在の日本にもズバリと通用する。ソローは、ウォールデン岸での2年間の「森の生活」を本にして出版していますが、うらやましいほどに、誠実な生涯を生きた人です。
彼は、「世に言う“資産”が増えれば増えるほど、“人間らしい暮らし”を営む機会が減る」とも書いています。
それにしても、ソローの言っていることは私には実に共感できます。
いくつかのメッセージを引用させてもらいます。
ちょっと長いものばかりですが。
この国の自由を守っているのは政府ではありませんよ。西部開拓を行なつているのも政府じゃないですしね。教育だって政府が行なっているわけではない。それらはすべて、アメリカ人民の国民性の賜物なのです。いやいや政府が邪魔することもあるけれども、そういう余計なことをしなければもっと多くのことが国民のカによってやり遂げられていたでしょぅ。だって政府なんてものは、そもそも世の人々がたがいに邪魔だてせずに生きていくために、当座しのぎで設けている方便にすぎないわけですから。私たちはなによりも先ず「人間」として生きるべきなのですよ。「臣民」として何かに仕えるのは、そこから先のことでしょ。正義を大切にする心をなおざりにして、法律ばかりに敬意を払う心を育むなんてのは、望ましいことじゃないですよ。
私が当然の権利として引き受ける「義務」はただ一つしかありません。つまりいつ何どきであれ、自分が正しいと思ったことを行なうという「義務」のことです。
団体に「良心」が付け加えられることはあるでしょう。但しそれは個々の人々が良心を持っている場合に、そうした人々が作った団体に限られるわけですけどね。
大勢の人間が、もっぱら「人間」としてではなく、ただの「機械」として、自分の肉体を差し出して「おかみ」(state)に仕えているわけです。
そろそろ私たちも、政府を権威ある「おかみ」と思うのをやめたいものです。
首相などは前にも書いたように、学期ごとに代わる学級委員長のような存在ですし、政府が何かを出来るなどと言うのはまさに共同幻想でしかありません。
ソローはもっと手厳しいです。
政府なんてものは、どんなに好意的に見ても、しよせんは当座しのぎの方便です。読み直してみて、改めて多くの人に「ソローの市民的不服従」を読んでほしいと思いました。
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