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2012/11/05

■節子への挽歌1891:歯ぎしり

節子
相変わらず難題から解放されず、真夜中に眠れなくなることがあります。
節子が隣で寝ていた頃は、こんなことは絶対にありませんでした。
もし心配事で目が覚めても、節子を起こして、話を聞いてもらえば、心が静まったからです。今は、それもかなわず、ただただ目が冴えてくるのに耐えなければいけません。

先週、歯医者さんから、人はみんな寝ている時に歯ぎしりしていると教えてもらいました。
私の上下の歯の咬み合せが、最近ずれてきている気がしてきたので、訊ねてみたのです。
そうしたら、それは歯ぎしりのせいで、歯ぎしりの原因はストレスだといわれました。
起きている時のストレスを、人は寝ている時に調整するのだそうですが、それがどうも歯ぎしりを起こしているわけです。
夜中に目が覚めるのも、たぶんストレスのせいでしょう。
歯ぎしりだけでは解消できないほどのストレスなのでしょうか。
たしかに、心当たることはあります。

しかし、私には歯ぎしりの意識がまったくありません。
長年、一緒に寝ていた節子から歯ぎしりしていたことなど聞いたこともありません。
ほんとうに寝ている時に歯ぎしりしているのかとても気になりだしました。
節子がいたら、お互いにどんな歯ぎしりをしているのか、確かめ合うことができたと思うと少し残念です。
私は、好奇心はそれなりに強いほうで、なにかが気になると究明したくなるのです。
歯ぎしりは、残念ながら違う方法で確かめなければいけません。

生きている以上、ストレスのない人はいないでしょう。
その解消法はいろいろあるでしょう。
就寝中の歯ぎしりも、正しい生命現象なのでしょう。

節子がいなくなって以来、私のストレス度合いは高まったかどうかはわかりません、
しかし、間違いなく言えることは、ストレスを解消する手立ては大きく失われたということです。
いまは就寝中の歯ぎしりぐらいしかないのかもしれません。
何かを楽しむという志向もほとんどなくなりました。
いや、楽しもうと思っても、正直、楽しめないのです。

にもかかわらず、体調は節子がいなくなってからのほうがいいかもしれません。
私の体調の悪いところを、まるで節子が持っていってくれたような気さえします。
節子はそういう人でしたし。
しかし、ストレスだけは持っていってくれなかったようです。
むしろ山のように置いていったのかもしれません。

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