■節子への挽歌1905:一人で珈琲
節子
風邪は悪化を踏みとどまっています。
昨夜の集まりは早く終わるようにしてもらいました。
今日も午前中は休んでいました。
用事であれば延期もできますが、誰が参加するかわからないオープンな集まりはやめるわけにはいきません。
それで今日もまた夕方目指して湯島に来ています。
風邪のせいか、頭がんぼんやりしていて、思考力があまりありません。
こういうときには電話もかかってきません。
また私の嫌いな静寂の夕方の時間です。
最近こういう時間が多い気がします。
次の来客までまだ1時間ほどあります。
彼が来たら珈琲を淹れようと思っていましたが、一人で飲むことにしました。
湯島の喫茶店もさびれてきました。
一時は入りきれないほどのこともありましたが、最近は10人も集まれば多いほうです。
おそらく私自身に「気」がないからでしょう。
湯島のオフィスは、しかし平成元年に開いたままです。
ほとんど変わっていません。
節子の好きだったリソグラフの額がはずされている以外は当時のままです。
節子がいるときも、こんなことは何回もありました。
しかし、サロンの始まる時間が近づくと、食べ物を買い込んできた節子がドアをあけました。
いつも御徒町の松坂屋で買出しをしてきてくれたのです。
そして花を活け、軽食の準備をし、今日は誰が来るだろうなどとよく話したものです。
それにしても、10年以上、よくサロンを続けました。
会費はとらないのかといわれたこともありますが、だれでも歓待する場にしたかったのと、お金から自由になりたかったのです。
節子にはとても苦労をかけましたが、そのおかげが今の私を支えてくれています。
たくさんの人たちが、いまも私を支えてくれています。
珈琲を一人で飲んでいると、いまにも玄関のドアが開きそうです。
今日は荷物が重かったと言って、倒れこみそうになって入ってくる節子が思い出されます。
時にみんなが来る前にといって、ケーキを食べることもありました。
でもそうした喜びは、もう二度とこないのでしょう。
今日のサロンは直前の欠席者が多くて、あんまり集まりそうもありません。
風邪をこじらせないように、早く終わるようにしましょう。
サロンの前に、来客が一人来ますが、お布施をもってきてくれるようです。
多くの人に支えられて、湯島のサロンはまだ続いています。
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