■節子への挽歌1911:節子、働いていないね
節子
最近わが家では節子の評判がよくありません。
なにしろ最近のわが家は良いことがありません。
それで、娘のジュンが線香をあげながら、節子、働いてないね、と言ってます。
節子、聞こえていますか?
わが家では家族同士は名前で呼び合うようにするのが私の方針でしたが、節子はこれに反対でした。
娘たちに親を名前で呼ばせるのはおかしいというのです。
私は、「お父さん」などという味気のない普通名詞で呼ばれるのは好みではありませんでした。
しかし節子は、娘が外で私のことを「おさむ(さん)」と呼ぶのはおかしいというのです。
どこがおかしいのか、私にはよくわかりませんが、夫婦で折り合いがつかなかったことの一つです。
ちなみに、娘たちは、両親の希望を半々ずつ受け入れているので、時に名前で呼ぶこともあるのです。
最近のわが家の不幸を書くのはいささか不謹慎なのでやめますが、ともかく凶事が続いています。
残された家族を守る責務を、節子は果たしていないのではないかというわけです。
困った時の神頼みではありませんが、節子はいまやわが家の守護神ですから、わが家で起こる不幸はすべて節子の責任になるわけです。
いやはや困ったものです。
節子、まじめに働いて、家族を守るようにしないといけませんよ。
もうこれ以上、凶事がつづくと、家族全滅ですぞ。
まあしかし、私の胃腸炎も順調に回復していますので、最悪の状況は脱しそうです。
ようやく節子が働き出したのでしょうか。
これからどんどん良いことが起こることを期待していますよ。
節子
頼みますよ。
これ以上の重荷はもう背負い込みたくないのですが。
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