■「プロシューマー」ってご存知ですか
最近、愕然としたことがあります。
企業の経営幹部の人たちとのミーティングで、「プロシューマー」という言葉を出したのですが、6人もいたのに、誰もその言葉を知らなかったのです。
その数日後に、今度はソーシャルビジネス研究会という集まりがあったのですが、そこでも誰も知らなかったのです。
みなさんはいかがでしょうか。
「プロシューマー」は、1980年代に未来学者のトフラーが言い出した言葉です。
「プロデューサー(生産者)」と「コンシューマー(消費者)」を重ねた言葉で、これからは消費者がどんどん自分で物を作り出すという展望の下で提案された概念です。
もう普通の日常用語になっているとばかり思っていましたが、逆に言葉としては存在を薄くしているようです。
言葉は概念のみならず、現実の世界を創出します。
私は、語彙の豊富さが世界の豊かさを示すと思っていますので、新しい言葉には関心を持っています。
カタカナ言葉が多いと言われることもありますが、カタカナ言葉もまた、間違いなく世界を広げてくれます。
もちろん世界を広げることの少ないカタカナ言葉は、私には興味はありません。
日本語で言える概念は日本語を使います。
ちょっとその気になってもらえれば、私の文章には、その種のカタカナ言葉はほとんどないはずです。
ところで、「プロシューマー」の話です。
濱野智史さんが、ある対談で、この言葉を使っていたのです。
そして、トフラーは「消費者の生産者化」と言う方向で、「プロシューマー」と言っていたが、最近のITの世界では、それと並行して、「生産者の消費者化」が進んでいると言うのです。
その事例として、最近話題の初音ミクをあげています。
なるほどと思いました。
このブログでも何回か書いてきましたが、私は「顧客」という概念はまもなく、なくなっていくだろうと思っています。
サービスからホスピタリティへと発想が変わりつつあることは、その一例です。
生産者も消費者も、一緒になって価値を生み出していく、それこそが成熟社会ではないかと思うわけです。
いずれにしろ、多角的な「プロシューマー化」が進展しているのは否定できません。
生産者と消費者の境界が溶け出しているように思います。
実態は進んでいるのに、それを表現する言葉は忘れられてしまいつつある。
私が愕然としたのは、そのことなのです。
現実が日常化したので、言葉が不要になり、消えていくということはあります。
しかし相変わらず、「顧客概念」が市場を覆っている。
顧客創造とか顧客価値とか、私には前世紀の遺物のような概念が闊歩している。
そのことにも、いささか愕然とします。
もちろん、世間が間違っているという意味ではなく、自分が違う世界に生きていることへの愕然さなのですが。
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