■水産業復興特区とショックドクトリン
東北復興庁は、今日付けで、宮城県が申請していた「水産業復興特区」を認定しました。
漁業への企業参入を促すために、漁協に優先的に与えられてきた漁業権を開放して民間からの投資を呼び込み、東日本大震災からの復興につなげるのがねらいだそうです。
こういう発想には大きな違和感があります。
「復興推進の主役」は企業でないといけないのでしょうか。
県の漁協は強く反発しているそうですが、なぜ反発しているのでしょうか。
漁業の主役が反対しているのに、それを特区として実現してしまう。
なにやら「ショック・ドクトリン」を思い出してしまいます。
前にも書きましたが、「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」という考えがあります。
たしかに、それは半面の真理ですが、危険な思想でもあります。
ジャーナリストのナオミ・クラインは、これを「ショック・ドクトリン」と呼びました。
有名な話では、2004年のスマトラ沖大地震の後に、津波で流されてしまったことを契機にして、スリランカの沿岸地に大資本による富裕層向けリゾート開発が一挙に推し進められたという事例があります。
それまでも観光地として狙われていたのですが、多くの零細漁民が生活しており、また土地の所有関係も複雑だったため、開発が実現できなかったのだそうです。
まさに、「惨事便乗型資本主義」です。
こうしたことが、東北被災地で起こっていなければと思いますが、すでにそうした動きは広がっているという人もいます。
新聞を読んでいるだけでも、そうではないかと危惧する事例はたくさんあります。
そうした視点で、しっかりと報道するマスコミは、日本の現状では存在しないのが残念です。
宮城県の今回の特区は、いろんな意味で私にはとても違和感があります。
現場でしっかりと働いている漁民のみなさんが主役にならずに、いつの間にかみんな「雇われ漁師」になる歴史が始まったような気がします。
そうではない「ささえあいの新しい漁業」の姿だ、一時、見えてきたような気がしますが、やはり大きな流れには勝てないようです。
アベノミクスが、日本を壊していくことは、ほぼ間違いないでしょう。
ますます住みにくくなりそうです。
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