■ヘンリー・スティムソンの信条
先日、書いた「オリバー・ストーンが語るアメリカ史」の話ですが、その3回目に、トルーマン政権の陸軍長官だったヘンリー・スティムソンの話が出てきます。
彼は、ソ連を威圧するために水爆開発に積極的なトルーマン大統領に対して、異を唱えるのです。
1995年の9月の閣議で、ヘンリー・スティムソンはこう言います。
私が長い人生で学んだ教訓。
それは、ある人間を信頼にいたる人間にする唯一の方法は、こちらが彼を信頼することである。
こちらが不信感を示せば、相手は信頼できない人間のなる
極めて真っ当な発言ですが、なかなか言い切れないことです。
しかもそう主張したのが、陸軍長官の職にあった人です。
もうひとつのアメリカを感じます。
この延長上に、以前書いたオスグッドの戦略があるわけです。
そして、世界はその方向に転じて、トルーマンの路線を越えたように思います。
このドキュメンタリーを見ると、シビリアン・コントロールよりも、実際に危険をおかすことになる軍人のほうが信頼できるような気もします。
私は、「当事者」の判断が基本になるべきだと考えている人間なので、どうしてもそう思いたくなります。
もちろん、そういう軍人は少ないでしょうが、それは育て方や仕組みが大きく影響しているように思います。
残念ながら、トルーマンはヘンリー・スティムソンの意見を却下し、水爆の開発に取り組みます。
そして米ソは泥沼の核開発競争に進んでいくわけです。
ヘンリー・スティムソンの信条は、あらゆる場面に有効だと私は思います。
企業においてもそうですし、福祉においてもそうです。
いやそれ以前の問題として、まわりを信頼するか、しないかで、生きやすさが全く違うでしょう。
しかし、最近のアンケート調査では、周りの人は信頼できないと思っている日本人は、他国に比べても多いようです。
どこで何が変わったのか。
悪いアメリカに、日本の社会が近づいていなければいいのですが。
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