■他者に守られている安全
アメリカ政府によるネット上の個人情報の極秘調査活動を国家安全保障局の職員(29歳のエドワード・スノーデンさん)が内部告発したことが大きな話題になっています。
「テロ対策を名目に、メールなどのネット上の個人情報を収集していた」と朝日新聞に書かれていました。
私が驚いたのは、こうしたことが政府によって行われていたことではありません。
そんなことは当然行われていると思っていました。
私が驚いたのは、まだこういうことが問題にされる程度に、アメリカ社会にも健全性が残っていたということです。
しかし、ほんとうにそうだろうかとと思っていたら、案の定、不安材料がでていました。
事実が報道された後の世論調査によれば、「テロ捜査の方がプライバシーの保護より重要」とする意見が62%にのぼったと、同じ新聞記事に書かれていました。
テロ対策のためなら、メールなどのネット上の個人情報を収集することも認めようと言う人が過半を占めているのです。
スノーデンさんの行為は、決してエシュロン(映画にもよくでてくるアメリカの国家安全保障局の情報収集システム)の牙城は崩すことにはならないでしょう。
そういうシステムは、政府を信頼できる限りにおいては、国民を守る方向で働きますが、政府次第では牙をむき出して国民を襲ってきますから、そのマネジメントやガバナンスは民主的でなければ危険です。
今回告発された極秘調査は、テロ防止策の一環としてブッシュ前政権下で始まったそうです。
オバマ政権は、それを継承し、拡張したといわれています。
私自身は、前にも書いたようにオバマ政権が人権重視しているなどとはどうしても思えませんが、せめてこういう活動はもっと開かれた管理下で行われるべきだろうと思います。
私たちの「安全」を守るために、管理社会化はますます進展するでしょう。
管理されるとは守ってもらうことだと考える人も少なくないでしょう。
しかし、他者に守られている安全は、私には違和感があります。
私が望みたい「安全」とは、どうも違っているような気がします。
個人情報の極秘調査に取り組む政府には不気味さを感じます。
同時に、個人情報を隠そうとする人たちにも、私は不気味さを感じます。
あっけらかんと自らを開いていく生き方を、みんながするような社会を目指したいものです。
東北の被災地の沿岸で、高い防波堤が築かれ、生態が変わり、シラウオが取れなくなるかもしれないという報道をテレビでやっていました。
高い防波堤に守られてまで、海沿いに住んで、漁業をやるという感覚が私には全く理解できません。
個人情報とは違う話ですが、ここにも同じような違和感を持ちます。
私には繋がっているように思えます。
生活には常に危険はつきものです。
危険がない世界での、守られた安全な生活は、とんでもなく安全でない世界のように思えてなりません。
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