■節子への挽歌2098:ネクタイ
節子
ジュン夫婦が誕生日祝いを持ってきてくれました。
私が、最近は2本のネクタイを交互に使っているといっていたのを、聞いていたようです。
それで、それぞれが1本ずつネクタイを選んだのだそうです。
うれしいことです。
しかし、最近はネクタイをする機会は極度に少なくなっています。
それでついつい、「ありがとう」と言った後、でもする時がないよ、と言ってしまいました。
せっかくの好意に対して、実に失礼な話です。
こういうところが、私の欠点です。
よく言えば素直すぎ、悪く言えば、不躾なのです。
ところでネクタイですが、クローゼットにたくさんのネクタイが眠っています。
いろんな人たちからもらったネクタイも少なくありませんが、どうもそうしたネクタイは使う気になりません。
なにか、贈ってくれた人に首根っこを押さえられるような気がするからです。
そんなわけで今は2本のネクタイを交互に使っているのです。
以前どこかに書きましたが、1本は500円、1本は5000円です。
5000円は節子と一緒に買ったネクタイですが、500円も節子につながっています。
節子が家族みんなを誘って、東京ミレナリオに行った時だったと思いますから、いまからもう10年ほど前です。
すごい混雑で、歩くのが大変な状況でした。
なぜか私だけ先に進んでしまい、出口から出たところで、家族を待っている状況になりました。
いつになっても家族が来ません。
ふと前を見ると、お店の店頭で2本1000円のネクタイが売っていました。
やることがなかったので、それを買ってしまいました。
私が一人でネクタイを買ったのは、もしかしたら、それが初めて最後かもしれません。
そんなわけで、2本のネクタイの1本に選んだのです。
どこかに節子の記憶もあるからです。
あの頃は、節子は元気でした。
その年に完成した丸の内オアゾで家族の忘年会の食事をしようと言い出したのも節子でした。
東京の再開発は、節子は好きだったのです。
私は逆に嫌いでした。
どんどん居心地の悪い人工空間になっていくことに抵抗がありました。
節子がいなくなってから、そうしたところには行く機会は減りました。
どうして節子は、そういうところが好きだったのでしょうか。
ちなみに、節子からネクタイのプレゼントをもらったことはなかったような気がします。
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