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2013/07/31

■節子への挽歌2145:ホイヘンスの発見

節子
2つの振り子を近接して置いておくと、いつのまにかその触れ方が同じになってしまうのだそうです。
今から350年も前に、そのことに気づいたのはオランダの科学者クリスチャン・ホイヘンスです。
彼はこの現象を「同調化」と呼びました。
実は時計の振り子だけではなく、同じような現象はいろいろあります。
私がこのことを知ったのは、光ファイバーのことを調べていた時です。
光にも同じような現象が起こるのです。

さらに生命体にも「同調化」は起こります。
医療の世界では、この原理をつかった療法も広がっています。
人の心身も、自然と同調化するようにできているのです。

夫婦や家族は、多くの場合、隣り合って生きていますので、当然のことながら同調しやすでしょう。
夫婦は似てくると言われるのは、その証です。

ホイヘンスの発見によれば、同調した振り子の振れ具合は、いずれかの振り子に合わせるのではなく、相互が歩み寄って新しい振りを創りだすのだそうです。
まあこのあたりの記述は、私もきちんと調べて書いているのではないので、不正確かもしれません。
しかし、どちらかに合わせるのではなく、一緒になって新しいリズムを創りだすことで、とても安定したリズムになるというようなことを、何かで読んだ気がします。
節子と私の関係を考えれば、これは実にうなづける話です。

私たち夫婦のライフスタイルは、当初はかなり違っていました。
家族や夫婦に関して、かくあるべしという理想をもっていた私は、最初はその理想を節子に働きかけたと思います。
しかし、幸か不幸か、節子はそれを器用にこなす賢妻でもなければ、それを無視する悪妻でもありませんでした。
まあ要するに、私の理想を深く理解しない愚妻だったわけです。
節子に失礼ではないかと思われるかもしれませんが、私にとって「愚か」ということは必ずしも否定的な意味ではないことを、節子は知ってくれていますので、いいでしょう。
そもそも、自分の理想を他者に押し付けられると思うことも、明らかに愚者の発想です。
私たちは、愚妻愚夫の夫婦だったわけです。
そしてその関係の中から、新しい私たちスタイルが生まれてきたのです。
まるでホイヘンスの家の振り子時計のように、気がついたら、同調していたわけです。

隣にあった振り子時計が外されてしまったら、残された時計はどうなるか。
ホイヘンスは、その実験はしたのでしょうか。
もっとも、その実験結果は知りたくはありません。
なぜなら、「止まる」のを待つだけの話だからです。

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